愛国百人一首
香川景樹
一方に靡きそろひて花すすき
風吹く時ぞみだれざりける
<愛国百人一首における決まり字>
ヒ(1字決まり)
<愛国百人一首における同音の数>
ヒ音はこの札のみ
<歌意・鑑賞>
ふだんはばらばらの方向にうち乱れている花すすきであるが、風が吹くときは、その風の
方向に皆なびきそろって少しも乱れない花すすきであるのだ。
花すすきとは、穂の出た薄である。風のないときは、薄はいろいろな方向を向いて伸びて
いるのだが、風が吹くと、その風になびいて、一斉にその風の方向にそろって同じ方向を
向くのである。
花すすきを譬えとして、日本では、各人・各藩がそれぞれ普段はいろいろな方向を向いている
が、ひとたび国の大事が起きれば、皆心を一つにしてその大事に対して立ち向かっていくのが
日本人であるという思いを歌に詠んでいる。
<コメント>
池田藩士の林善太兵衛の次男、鳥取に生まれ、20歳で江戸に出る。30歳で梅月堂香川景柄
の養子となる。徳大寺家に仕え従五位下長門介に叙せられる。
小澤蘆菴に私淑し、歌名あらわれる。後に養父と意見を異にし、
縁を絶ち、桂園派と呼ばれる一派を開くことになる。
賀茂真淵の崇古主義に反対、あるがままの純粋感情を重んじた。
生涯古今集を手本とし、貫之を目標として勉強したという。
天保14(1843)年、京都に76歳で没す。
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2008年5月31日 HITOSHI TAKANO