壬生忠岑
有明のつれなく見えし別れより
あかつきばかり憂きものはなし
決まり字:アリア(三字決まリ)
「恋すてふ」の壬生忠見の父である。
摂津大目(摂津職の四等官)どまりなので、決して身分は高いとはいえない。しかし、後鳥羽院
が、古今第一の歌はと御下問があったときに、定家と家隆の両人ともが、この「有明」の歌をあげた
ということである。
身分とは別に、歌で名を残したのである。
有明の月が後朝の別れを惜しむ私たちを冷淡に見下ろしていたあの時の別れ以来、暁ほどつらいもの
はありません。
定家はこの歌を「此こと葉のつづきは及ばずえむにおかしくもよみて侍るかな。これほどの歌ひとつ
よみ出たらん、この世の思ひ出に侍るべし」と評価している。
定家が、百人一首に撰んだことこそがこの歌の後世の評価に繋がっているのだろう。
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2008年4月21日 HITOSHI TAKANO