従二位家隆
風そよぐ楢の小川の夕暮れは
禊ぞ夏のしるしなりける
決まり字:カゼソ(三字決まリ)
作者は、藤原家隆。太宰権帥光隆の子である。宮内卿、従二位に叙された翌々年に80歳で亡く
なった。和歌は俊成について学ぶ。
多作をもって知られる。一生の詠歌は6万首に及ぶという。当時、定家
と並び称された歌壇の大物である。後鳥羽院に愛された新古今和歌集の
選者の一人である。家集は「壬二集」というが、2800首が納められている。
これだけの大物であるので、定家は自身と合わせて、3番目・4番目の人麻呂・赤人の歌聖に対比
した97番目と98番目に配置したのだろう。
その6万首といわれる中から定家が撰んだ一首が、この「風そよぐ」の歌であった。
「なら」は樹木の「楢」と地名を掛けている。禊ぎは6月と12月の大祓のうち、陰暦6月
の晦日の大祓のことを言っている。夏の終わりの日である。河原に出て様々な罪けがれを払って
身を清める行事であった。
楢の葉に風がそよそよと吹き渡るならの小川の夕暮れは、すずしくてまるで秋のようですが、
今行われている禊ぎの大祓が、暦の上で夏である証拠です。
これらの項を書くにあたり、我が家にある100冊ほどの百人一首関連本の中から特に参照
したものを紹介しておこう。もちろん、これ以外にも多くのものを参照した。感謝!
・博文堂「鑑賞百人一首新講」吉沢義則監修
・新人物往来社「歴史読本臨時増刊〜ものしり事典シリーズ〜百人一首100人の歌人」
・角川文庫「百人一首の作者たち」目崎徳衛
これで98リンク。あと2つである。
☆☆ 同じ作者の「百人秀歌」の解説 ☆☆
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2008年5月5日 HITOSHI TAKANO