続シン・後輩への手紙(VII)
Hitoshi Takano Feb/2025
大相撲に学ぶ
前略 先月は大相撲の初場所二日目に観戦に行かれたのですね。
相撲好きの我々ですが、本場所観戦は、圧倒的にH君のほうが多いですね。
だいたい、私の大相撲観戦は、蔵前国技館時代ですから、、、
両国国技館以降は、テレビ桟敷での観戦です。
大相撲の力士らのインタビューを聞いていると、競技かるたの世界にも置き換えられる発言を感じます。
よくあるのが「一日一番、集中していきます」。かるたに置き換えれば「一枚一枚、集中していきます」ですね。
以下、「大相撲発言」→「競技かるた翻案」。
負けた時の「切りかえます」→お手つきした時に「切りかえます」。
場所途中の勝利者インタビューで目標をきかれて「一番一番積み重ねていきます」→試合途中で「一枚一枚積み重ねていきます」
勝因をきかれて「前にでる相撲が取れました」→「攻めるかるたが取れました」
何がよかったかきかれて「自分らしい相撲が取れました」→「自分らしいかるたができました」
攻められての逆転勝利で「辛抱したのがよかったです」→逆転して「よく辛抱できました」
(本当はわかっているのにはぐらかす)「ちょっとわからないです」(宇良関に多い)→「何故勝てた(何故取れた)か、わからないです」
(はぐらかしにも使うし、本当のこともありそう)「無我夢中でした。気づいたら勝ってました」→「無我夢中で取っていただけです」
抱負などを聞かれたときに(高安関に多い)「お客さんに喜んでもらえる相撲をとりたい」→「魅せるかるたをとりたい」
行司さんの「相撲は見ていません。勝敗を見ています。まわしより下しか見ていません」→「札際しか見ていません。」
格言的なことだと「押さば押せ、引かば押せ。」→「攻められたら攻めろ、守られたら攻めろ」
手をつきそうになったら「手のひらを見ろ」→お手つきしそうになったら「手のひらを見ろ」(「?」ちょっと難しすぎ、、、)
手をつきそうになったら「手をつくくらいなら顔から落ちろ」→お手つきしそうになったら「手の有効部分で触るくらいなら、身体ごと落ちろ」
「三年先の稽古をしろ」→「三年先の練習をしなさい」
いろいろご意見はありそうですが、思いつくままに書いてみました。
ところで、初場所前のNHKの「どすこい研」は「突き・押し」がテーマでした。
湊川親方(元(大関)貴景勝)の説明でしたが、二所ノ関親方(元(横綱)稀勢の里)が、その突き・押しの解説に感心していました。
「こういう的確な言語化をできる力士が、横綱・大関になれる」という趣旨の発言もしていました。
このふたりは、現役時代はどちらかというとNHKのインタビューアナウンサー泣かせで、木で鼻を括ったようなありきたりの答えしかしてこなかった印象が強いのですが、
引退後は、よく話しますし、すごく理論的に説明します。
NHKのアナウンサーの誘導(優勝争いなどについて何か言わせたい感じとか)にひっかからないようにして、また、手の内を明かしたくないので、
多くを語らなかったのだと思いますが、すごい変わりようだと思います。
おそらく、上記のはぐらかし回答をする力士たちにも話をさせれば、目から鱗の発言が多々きけるような気がします。
初場所を盛り上げた金峰山関は、外国人力士ということで日本語ネイティブでないせいか、非常にストレートに素直にインタビューに答えていたような気がします。
一方、同様に初場所で優勝決定戦にまで持ち込んだ王鵬関は、受け答えはするものの、わりと類型的な返答をしていたようにも思いました。
優勝し、場所後に横綱に昇進した豊昇龍関の優勝インタビューでの立浪親方からの「楽しんで相撲を取れ」というアドバイスが転機になったという話はよかったと思います。
競技かるたでも「楽しんで取る」ことは大事なことだと思うからです。たとえ、試合で負けたとしても、また、一試合の流れの中でビハインドを背負っていたとしても、
「楽しむ」気持ちは大事です。
また、初場所途中で、横綱照ノ富士関が引退をしました。照ノ富士関も、インタビューにはストレートに答えていたとは思いませんが、
引退後は親方としてきっといろいろと興味深い話をしてくれることでしょう。
というわけで、競技かるたに関しても、H君には的確な言語化をできるようになってほしいと思っています。
強くなるために大事なことだと思います。ただ、ライバルに手の内を明かしたくないのであれば、上記のはぐらかし回答もありだとは思いますが、せめて、私には的確に言語化して説明してほしいと願います。
ライバルということでいえば、H君の同会にも同級にあがってきた方がいて、上の級にはH君より先にあがると言っています。
はぐらかしも露骨にするようなことはせず、切磋琢磨する関係を大事にして上の級を目指してください。
さて、次も賛否あると思いますが、大相撲の番付に競技かるたの級をあてはめてみましょう
「前相撲」→「F級以下」
「序の口」→「E級」
「序二段」→「D級」
「三段目」→「C級」
「幕下」→「B級」
「十両」→「A級」の入賞未経験者
「前頭」→「A級」の入賞経験者
「三役」→「A級」の優勝経験者
「大関」→「A級」のタイトル経験者
「横綱」→「A級」の永世位保持者
まあ、システムに相違があるので、無理なこじつけになってしまいました。話のタネ程度に読んでください。
私が相撲で好きな言葉を二つ紹介しておきましょう。
ひとつが「辛抱、我慢」。試合で不利になってくると、心の中で、ここは「辛抱、我慢」だと言い聞かせて、次の一枚に集中します。
もう一つが、横綱「大鵬」関が、誤審で連勝を止められた時に「そういう(誤審をまねくような)相撲をとった自分が悪い」という言葉です。
取りの主張で、相手がこちらの主張を認めてくれない時「相手にはっきりとわからせるような取りができなかった自分が悪い」というふうに思えるようになりたいものだと思っています。
(なかなか、できていませんが、、、)
相撲にも「後の先」と言われる極意があります。競技かるたにもある極意だと思っています。大相撲に学ぶことはたくさんあると思います。
お互い、相撲好きとして、相撲から学んだことを競技かるたに活かして、試合に練習に励みましょう。
ではまた、お手合わせをお願いします。
草々
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