続シン・後輩への手紙(VIII)
Hitoshi Takano May/2025
観察眼を養え
前略 KH君の最近の発言を聞いていると、成長していると感じることが増えてきました。
いつまでも「不肖の弟子」などと言っていてはいけないと思う今日この頃です。
先月、相手陣への札の送りを考える時に、相手の特性を見極めて、それを考慮した送りをするようにしたいという旨の発言をKH君の口からきいたとき、
「できるのかよ?!」と突っ込みをいれたくなりもしましたが、そういうチャレンジを自分なりに考えるようになったのかと、その成長に驚きもしました。
私との170の対戦数に裏打ちされた「対師匠用」の送りを試みていることは承知していましたが、それを全ての対戦でやってみようというのは相当な覚悟だと思います。
もちろん、大田かるた会や品川八潮かるた会のようにほぼレギュラー参加している練習会で何回も対戦している相手にそれを試すということは、対戦の蓄積があるのでやりやすいと思います。
しかし、「初顔合わせ」の相手と取るときには、その送りパターンの根拠となるデータは少なすぎます。
序盤である程度、しっかり見極めないと手遅れになります。とはいえ、中盤や・終盤の相手の特性(こちらが認識している範囲での特性)が序盤とは異なるケースは多々あります。
だいたい、KH君からして、終盤の追い上げの中で見せる取りは、序盤や中盤からうかがい知る特性とは異なるように感じます。
練習の時にアドバイスしましたが、自分の中で「1本の柱」となる、送りのポリシーをまずは確立してください。
この柱は、相手がどうこうというよりは、自分にとっての取りやすさ(攻めやすさ・守りやすさ)のメリットを感じる送りという観点から考えましょう。
この送りポリシーの柱に、アレンジとしての枝や葉の部分をくっつけていきます。
これが、相手の特性を見たうえでの送りという考え方になります。
相手が嫌がる送りという観点でもいいですし、相手の不得手を突く送りという観点でもかまいません。
結局、相手の特性を見切れなかったときは、自分のポリシーの「柱」に戻ることが大事で、試合途中で「迷う」ことが一番よくありません。
まず、これを理解していただいた上で、KH君がするべきことをお伝えしたいと思います。
それは、「観察眼」を養うことです。
練習の時、自分の試合が終わったら、まだ取っている他の試合を見て観察眼を養ってください。誰が、どんな取りをしているか、どんな配置をしているか、どんな送りをしているか、
構えや手の出し方や音への反応とか、観察するところはいっぱいあります。
大会での試合は、勝ち進めば次の試合があるので、それに備えて休んだ方がいい場合が多いのですが、余裕があるなら、次の自分の対戦相手になりそうな人を観察してもかまいません。
でも、あくまで余裕のある場合です。私は、身体と頭脳を少しでも休ませる方を推奨しますが、、、
勝ち進めず、早くに負けてしまったら、勝ち残っている人たちの試合を見学して、観察して、学んでください。
上の級が一緒の大会でしたら、上の級の人の試合をみて、学んでほしいと思います。
負けたら、すぐ帰る。地方大会だからといって観光にでてしまうというのは、もったいないと思います。観光は前日か翌日にしましょう。
だいたい、勝ち進んだら、観光などはできないわけです。決勝までいくつもりで、その日、一日は「かるた」に時間を使いましょう。
こんないい学びの機会はないと思ってください。
こうした学びが、KH君の相手の特性を考慮した送りのための訓練になるはずです。
最近、品川八潮でも、他会の練習方法を真似て、勝負が決したあとも札をわけて、運命戦まで練習するようにしています。
それはそれで、小学生達には練習時間の有効活用という観点でいいと思いますが、もしもちゃんと他の試合から学ぶことができるならば、他の試合を見るということをさせてもいいと思っています。
今のところ、八潮の小学生は、自分の試合が大差で終わると、札を分けての練習をするように言わなければ、他の試合をみて学ぼうとすることなく記録をつけたら、席をはなれてしまっているので、
「見学」して学ぶは、まだまだ先の話なのでしかたないのですが、、、
KH君は八潮の会員なのですから、見ることの大事さを小学生に伝える立場にまわってもかまわないようには思います。
会長さんと話してみてもよいのではないでしょうか?
KH君が、目指す送りのポリシーを確立するために観察眼を養うのであれば、それは、小学生の練習からでも会得に役立つことはあると思います。
そして、それが観察していた小学生個人個人へのアドバイスにも役立つことになりますから。
いろいろ試行錯誤してみてください。
ではまた、お手合わせをお願いします。
草々
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