インドへの手紙(VII)
Hitoshi Takano Nov/2015
大山札への対応
前 略 S君、授業で忙しいのでメールが間遠になっているということですが、気にしないでください。
今の君には、授業はとても大切です。授業と競技かるたを両立するためにも、授業をおろそかにしてはいけません。
今回のテーマは大きく二つですね。一つは、名人戦予選のこと。もう一つは大山札についての質問でした。
まずは、名人戦の予選の件、指摘のとおり、10月の開催です。開催の二日前のメールで、予選をビデオに撮ってアップ
してくれというリクエストでしたね。
無理を言っては困ります。あのピリピリした試合会場でプライベートビデオの撮影などは無理です。そんなことしていたら、
役員に注意されて退出させられるとの私の回答には理解したと返事をくれましたね。
ところが、次のメールでは、「最終試合だけでも録画してほしい。トライしてみてほしい。」というのは、私の回答の
趣旨を理解していないですね。
その理由として、「西郷VS前田戦の名人戦のビデオクリップを見ることができる」というのですから、やはりこちらの
状況をわかっていないとしか思えません。
全日本かるた協会(S君は、AJKAと略して書きますね)の許可を得ないと無理です。同協会は、基本的に放送事業者
(すなわちNHKやニコニコ動画など)に対して許諾を与えているということです。その前に、競技する選手の試合環境を
優先して運営しているのです。撮影が、試合の運営に差し障るのであれば、撮影を許可することはありません。
S君が見たというビデオクリップも、当時はBS中継をNHKがしており、その映像をYoutubeで見たということかと思います。
気安くプライベートビデオで取れるものではありません。
私は出場しないのかという質問もありました。80年代に7回ほど出場した話をしましたが、今は出ていません。その理由も
書きました。わかってくれたものと思っています。現在は出場もせず、当日、会場に観戦や応援に行ってもいないことを
書いているのに、撮影してくれというのは無茶な話です。
見たいならば、やはり日本に来て自分の目で確かめてほしいものです。
結果を教えてほしいというので、東西の名人戦・クイーン戦の予選結果をベスト8まで書きましたが、S君はいったい
何人の選手を知っているのでしょうか。試合を見ているわけではないので、私にはコメントも解説も書けません。
もう一つのテーマは大山札が双方の陣に別れて場合の取り方についてでした。
相手に先にどちらかを囲われたケースとか、自分が敵陣を囲うことを前提にしたケースとか、場合をわけて説明したので
これらの各論については理解してくれたものと思います。
特に、大山札が双方の陣に別れていた場合は、両方を取ろうと思うと「二兎を追うもの一兎も得ず」になってしまうので、
50%の確率で取れればいいという説明はわかってくれたようですね。「なぜならば」の部分をしっかり理解してくれた
ことが嬉しく思いました。
「なぜならば」は、むしろ決まり字が短くなった大山札を取ることのほうが大事だからということです。決まる前に
取れていれば、決まりが短くなったあと取れなかったとしても50%はKeepできます。決まる前に取れなければ、決まった
あとに取ることでこれまた50%をKeepしたことになります。最初に取れて、次も取れれば2枚中2枚をKeepしたことに
なり100%です。これは試合の中で大きなアドバンテッジです。試合全体を考えた時にいかに二枚目の取りが大事かが
わかるかと思います。
しかし、「わかった」という舌の根も乾かぬうちに(メールなので適切な表現ではありませんが)、「でも、両方を
取るための注意点を教えてくれ」というのですから、本当にどれだけわかったのかはわからなくなりました。
最初から、どちらが出ても対応できるようにするのであれば、右利き同士を前提にすれば、自陣は右サイドの外側に
配置し、相手の大山札との中間まで手を出して決まり字を待って聞き分けて取ることと書きました。
相手がどちらかを囲っていたら、指先で「突き込み」をすることも書きましたが、中途半端になって「お手つき」
しないかが心配です。なお、左利きが相手の場合は、何が最良か自分で考えてみて下さい。
なんにしても、私としては、あくまで最初の出札は確実に50%で満足して、2枚目を大事に考えてほしいと
思っています。
"Also how should I try to balance my teiichi when I get completely random cards ?"
この質問にも困りました。質問自体が漠然としている感じです。もう一般論で回答するしかありません。テーマを
しぼった具体的な質問のほうが答えやすいのですが、、、。往々にしてこういう質問の時には、質問のきっかけに
なった事例とか、質問の意図があるので、そこを確認したいのですが、とりあえずの回答をしたうえで、質問の
背景も問いかけてあります。でも、けっこうこっちの質問はスルーされることが多いんですよね。質問したことを
忘れかけている頃に、何通ものメールのやりとりのあとで思い出したように回答してきたりすることもありました。
学校も忙しいようで、メールも読み飛ばしていることもあるのでしょうが、質問には答えてほしいものです。
さて、こちらの回答は、とりあえず一般論です。右利きなら、右:左のバランスは55:45〜60:40くらい。上中下段
のバランスは、現在の傾向は上:中:下で3:3:4くらいということです。
ただ、上段と下段を多めにして中段は少なめにという意見もあることをつけ加えておきました。中段が多いと
攻めるときの邪魔になるという考え方を紹介するとともに。
最後になりましたが、S君の新しい動画はいつアップされるのでしょう。なかなか実現しません。楽しみに待って
います。
では、また。
草 々
次の手紙へ 前の手紙へ手紙シリーズのINDEXへ
☆ トピックへ
★ 私的かるた論へ
☆ 慶應かるた会のトップページへ
★ HITOSHI TAKANOのTOP PAGEへ