また・後輩への手紙(番外編)
Hitoshi Takano Feb/2017
飽きてない?
前 略 2月になりました。みなさんにとって学期末試験は終わりましたが、受験生にとってはこれからが入試の
シーズンです。1年生のみなさんは、昨年の今頃のことを思い出してほっとされているのではないでしょうか?
さて、入試のシーズンは大学キャンパスは試験会場となります。キャンパス内の練習場も自由には使用できない時期
かと思います。地区センターなどの様々な会場を借りての練習になることと思いますが、3月末の職域学生大会に向けて
の大事な練習期間ですので、春合宿を含めてしっかりと練習を積んでいただきたいと思います。
おそらくみなさんの中には、「練習の間が空くのは嫌だ。練習が待ち遠しい」という人と「試験も終わったし、授業も
レポート課題もないので、練習を休んでしばらく自由な時間を好きに使いたい」という人がいることと思います。
どちらのスタンスでも、限られた学生時代の時間の使い方ですので、有意義に過ごしてほしいと願っています。
しかし、このような練習に対しての思いとは別次元で、「競技かるたにも飽きてきた」と感じている人はいない
でしょうか?
私のように38年間にわたり3500戦以上を取っている人間の前で、「飽きた」と言い放つのもいかがなものかとは
思いますが、そのような可能性があることは否定できません。
何故、飽きるのでしょうか?
実は、私は先日、プロゲーマーで格闘技系のゲーム界では著名な梅原大吾さんの講演を聞く機会に恵まれました。
長く続けるためには「飽き」がこないようにしなければならないということを語っていました。至極もっともな
ことだと思います。では、「飽き」がこないようにするためにはどうすればよいのでしょうか。
それは、「成長の実感」ということだそうです。梅原氏の著書には「一日ひとつだけ強くなる」というタイトルの本が
あります。「一日ひとつだけ強くなる」ということも「変化」ということでしょう。
ゲームに関しては、「やればやるほど成長が遅くなる」そうです。このことは、私が「競技かるた」をやっていて
感じることでもあります。習いたてのころの進歩のスピードとある程度のレベルに達してからの進歩のスピードは
格段に遅くなっています。
梅原氏は、メモをとることにしたそうです。その日、発見したこと、成長を感じたことをメモしたそうです。それを
見なおすことで成長を感じるようにしたそうです。皆さんが、今年の練習から練習ノートをつけることにした
ということですが、まさにその手法を競技は違っても世界のトッププレーヤーも実施しているのです。
とはいえ、それでも成長が感じられなくなる時がくるそうです。その時のために、何をすればよいのでしょうか。
梅原氏は、こういいます。「自分に何か変化を与える」と。
例として、10のうち9を変えずに1を変えてみるそうです。そうすると何がしかの「発見」があるそうです。
その「発見」が「成長」なのだそうです。1を変えて続けていくとある日気づくそうです。「10のうち2を変えても
大丈夫だ」と。そうしてしばらくして再び気づくそうです。「10のうち3を変えても大丈夫だ」と。この繰り返しが
「進歩」につながるそうです。
ただ、変化を与えると勝率は下がるといいます。トップゲーマーの梅原氏だから言える数値かもしれませんが、
勝率が95%あったとして、変化を与えると勝率は80%に下がるそうです。しかし、この勝率80%への低下は
将来の95%への投資(準備)だということです。
この話は、私にも実感があります。自分の体験と言うよりも、対戦相手の成長を見る中で現れる事象です。今は、
最初から「攻めかるた」を厳しく言われて指導されますが、以前それほどでもなかった時代、初心者が札を取れる
ようになるのは自陣の札からでした。「守り」なのです。先輩と対戦し、大差をつけられると札の多い自陣を
取るようになります。そこで「守り」が強くなり、終盤粘って枚差を減らすようになります。この選手が成長の
過程で「攻めかるた」を始めると、その変化の際は、一時期同じ先輩との対戦でも枚差が今まで以上に開いて
しまうのです。しかし、それは将来への投資で、しばらくすると枚差は減り、先輩への勝利につながっていくのです。
というわけですので、「飽きた」と思っている方は、ぜひ、自らに「変化」を与えてみてください。きっと
新しい発見があり、「飽きず」に次のステップにいくことができると思います。
私自身を振り返ってみるとどうでしょうか?
考えてみると、いろいろな変化の中にさらされているように思います。まずは、対戦相手の変化です。大学の
かるた会には、毎年新しい会員が入ってきます。そして強くなっていきます。対戦する相手が初顔合わせというのも
よい刺激ですし、そしてその選手がだんだん強くなっていくので、そこにも同じ対戦あってであっても「変化」を
感じることができるのです。
また、自分自身が変化しています。一つは加齢です。経験値が増えてことによる変化とともに肉体的な老いによる
変化です。その変化を認識し、その変化にあわせた技術的な変化や思考的な変化を自ら課さなければならないという
ことになります。そこには「飽き」の入る余裕がありません。
自分自身が置かれている社会的な環境も変化しています。そんな中で、変化する状況に対応することを考え、実践
することも変化です。この要素も忘れてはいけないでしょう。
まだまだ、変化に対応し、自分自身を成長させたいと思っています。皆さんとお手合わせいただくことは、私自身
の成長への大事な要素ですし、私と対戦することで、皆さんに発見があり、皆さんの成長につながるのであれば、
それは私にとって大きな喜びになります。引き続き、よろしくお願いいたします。
それでは、また、練習場でお会いしましょう。
草 々
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