まだ・後輩への手紙(II)

Hitoshi Takano   MAY/2017

最多対戦者記録の更新



前 略 丙君、いつも練習の相手をありがとうございます。おかげさまで、ついに私の最多対戦数の相手が2017年4月12日をもって、丙君に変わりました。
 これまでの最多対戦者であったA君は、大学で同じ時期にかるたを始め、学生時代の4年間で55試合、卒業後13試合を数えます。1979年4月から2013年8月まで34年で68試合でした。丙君とは、1998年10月に初対戦し、丙君の学生時代の4年間で32試合、その後、勤め先を同じくしてから先月末までに38試合ということで、19年で70試合になりました。
 勤め先を同じくと言っても、同じキャンパスで仕事をした期間は、まだ約1年なのですから決して環境に恵まれていたとは言えません。この記録は、双方の都合が合って、しかも競技を続けていなければ達成できない記録ですから、お互いによくがんばってきたということでしょう。
 同じ職場の仲間として、年に1度の職場の名人戦企画や職域学生大会へのチームでの出場など、一緒に活動できていることも、丙君との出会いのおかげです。そもそも、CPSの組織化と婦人室での練習会の実施は、丙君がうちに就職しなければ実現しなかった話です。本当に感謝しております。

 さて、振り返るに丙君4年の9月に丙君に唯一の連敗で12枚差で通算6敗目を喫した時は、 「あぁ、強くなったな〜。ひょっとするとこのまま追い抜かれていってしまうのかなぁ〜?」と正直思いました。おそらく、丙君としても、あの頃が競技者として一番充実していたのではないでしょうか。当時は、A級へ駆け上がる感がありました。
 丙君としては、初めてのB級決勝進出時の相手が、現在の川崎名人だったというのが、今となっては幸運とも言えますし、不運とも言えるかもしれません。その時に丙君が勝っていれば、ひょっとすると川崎名人の誕生はなかったか、遅れた可能性があったといえるでしょう。
 この勢いで、次の決勝進出も近いと思っていたのですが、機を逸してしまったようですね。丙君のかるたは、量的な練習が実力維持ならびに実力アップのために必須のかるたです。就職によって、量の確保が難しくなったことで、勢いがとまってしまったように思います。
 私が三田に戻ってきた今、やっと量的な練習を充分とはいえないまでも確保できるようになったので、復活を期待したいと思います。ただ、今の丙君の年齢を考えると老け込む年齢ではないものの、若いときとは身体が変化していることは否めません。依然とは異なる練習の量を質の工夫でどれだけ活かせるかを改めて考えてみてください。

 ここで多少、最近の対戦で気づいたことを述べさせていただきます。

 丙君の特徴は、感じのはやさで取るというよりは、払いのスピードを活かして取るかるただと思います。だから、私の手とぶつかったときのクラッシュ感は半端ないのです。スピードと勢い、力強さが一体となったときの取りはすばらしいと思います。ただ気をつけていただきたいのは、力強さは「力み」につながるので、意識することはありません。質量にスピードが加われば、自ずからパワーとなりますので、意識するならば払いのはやさを意識してスピードアップを目指してください。何よりもそれが、丙君の特徴を活かすことになるからです。
 しかしながら、丙君の特徴を殺すことを自分自身がしていることに気がついているでしょうか?
 丙君は、差をつけられると自陣の左下段を囲うかのごとくブロックする手の動きをすることが多々あります。相手に「手がぶつかるのは嫌」という思いを抱かせ、相手の攻め手が鈍れば、それはそれで効果があると思いますが、カラ札の時のパフォーマンスとして相手への抑止力としてならば結構ですが、あの手の動きは、あきらかに丙君の取りのスピードを遅くしてしまっています。
 丙君の払いのスピードを活かすのであれば、一旦ブロックしてから取るのではなく、手元で聞き分けて決まりで払ったほうがよっぽどはやく取れます。相手が攻めてきても、彼我の距離の差を活かすことができます。丙君の払いのスピードでしたら可能です。払いのスピードは攻めだけに活かすものではありません。自陣の取りにも活かすことができるのです。

 私も、差をつけられ始めて、自陣上段の札を囲うように手をだすことを起点に上段を守るということをしていたことがあります。これで成功体験をしてしまうと続けてしまうことになります。しかし、そうそう柳の下にドジョウはいないのです。結局、これは自分の上段の取りの良さを殺してしまっていることに気づきました。普通に手元で待って聞き分けて上段の中央の取りで磨いた技術を使って取ったほうが効率がよかったのです。
 相手は、最初、こちらのトリッキーな手の動きに意表をつかれるかもしれませんが、数回やられると慣れてしまうのです。それよりも、普段から慣れている自分の特徴を活かした取りを続けて、相手が1枚取る間に2枚取るくらいの取りができれば、最終的には、なんとか接戦に近いところに持っていける可能性が高いのです。
 もちろん差をつけられているところからのスタートですから、うまくいかないことは多々ありますが、自分の個性や特徴を活かした取りを続けることが、未来につながるという気持ちが大事です。実際に未来につながったと思っています。

 丙君、どうでしょうか?自陣左下段をブロックする手の動きをやめてみませんか?私の提案に少しでも「そうかもしれない」とうなずく気持ちがあれば、やってみてください。やって、納得すれば続ける、納得しなければいろいろ試行錯誤を続けるということでいかがでしょうか。

 長年の対戦相手からのコメントということで検討してみていただければ幸いです。
 では、また、練習場でお会いしましょう。
草 々


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