再・後輩への手紙(2)

Hitoshi Takano Dec/2012

SFC練習再開


前略  総合政策学部1年生の両名には、SFCでの練習場の確保にご尽力いた だき、まことにありがとうございます。
 11月から平日の練習が可能になり、土曜日の日吉練習と平日のSFC練習ということ で、三田・日吉から離れているゆえのハンデを少しでも補ってもらえることを期待し ています。
 また、理工学部の"Y"君も練習に顔を出してくれるので、固定化しがちな練習面子にも 多少のバラエティができて助かっています。
 さて、SFCの両名には、私のほうから気づいたことを言っておいたほうがいいと思い ますので、ここに記すことにします。

"H"君へ

 ビデオで自分のフォームや取りを確認して、いろいろ気づいたことと思います。 気づいた改善点は、改善を実践しましょう。
 つよく意識しないと改善できませんよ。この間は、私が自宅のビデオカメラを持ってきましたが、メディアセンターで貸し出しを受ければ自分たちでも映像でチェックできますので、自分でフォームチェックしたいときに借りて試してみてください。
 さて、まずはフォームの高さを修正しましょう。高すぎます。あの高さだと体重移動が スムースにいかないでしょう。
 フォームの高さとも関係していると思いますが、「払い手」をもっときっちり できるようにしましょう。効果的なのは素振りです。手を出したときの手首の曲がり 方なども修正しましょう。あの手を出したときの手首の角度が、「払い」にいかされず 「押さえ」の温床になってしまっています。今は「払い手」をしっかり身体に染み 込ませてください。変に「押さえ手」の癖がつくと「払い手」のスピードアップの 妨げになると思います。
 とにかく、今は「払い手」の練習です。自宅でも時間をとって回数をこなして ください。みていてギクシャク感があるのです。もっとスムースに払えるように しましょう。そして、その次にスピードアップです。手だけで取りに行くのではなく 全身を使って、身体と手が一緒に札に反応するように心がけてみましょう。それに はフォームの高さだけでなく、膝の置き具合(場所や幅など)も工夫したほうが よいでしょう。構えたときの手についても工夫してください。指と指の間が離れて いてそのまま手を出すと突き指しやすいので他人の構えなども参考にしてください。
 そして、インターバル中の暗記をもっとこまめに入れてください。相手が取った 札を相手が拾いに行っている様子を見ることはありません。その間も場の札を見て 暗記を入れ続けてください。また、札の並べ直しや、札の送りにも時間がかかりすぎ です。もっと早く、手際よく並べなおせるはずですし、もっと早く送り札の決断も できるはずです。意識して改善に取り組んでください。
 もう一点述べます。
 「攻めろ!自陣はどうでもいい!」と先輩から言われていますが、相手が数枚で 自分がいっぱいでも、極端なことをいえば相手が1枚で自分が25枚でも、自陣 はどうでもよくて相手陣を攻めるというのは、確率論的にもナンセンスです。 たとえ相手が1枚でもその札が出たら取るつもりの気概をもちながら、どうでも よくない自陣をしっかりケアしましょう。自陣で取れる札は自陣で取ればいい のです。自陣で取れるなら取ってください。取れることがわかっているのに、 逆の友札を敵陣に取りにいかなくともいいのです。聞こえてしまったら、 仕方ないのです。先輩の指導のエッセンスは何かを考えればおのずから答え は出てきます。先輩たちは、強く意識させるためにデフォルメして極端な 物言いをしているのです。先輩の助言に素直なことはいいのですが、自分の 心の声にも素直になることが必要です。その上で、バランスのとれた考えを していきましょう。
 最後に、左利きの利点を考えて、かるたを作っていきましょう。左利きのメリット とデメリットを考え、左利きのメリットを最大限自分なりにいかせる方策を工夫して ください。
 いろいろ試すには、この前やったような決まり字五色かるたの20枚セットでの 練習もやりやすいかもしれません。工夫のヒントはいろいろなところにあると考え ましょう。
 とりあえずは、こんなところです。また、新たな問題点に気づいたり、"H"君の変化 を感じてきたら、その都度指摘していこうと思っています。

"K"さんへ

 "K"さんの競技かるたの基礎は、高校卒業までに形成されて、培われてきたもので す。それでB級まで来ているのですから、それをベースに自分をどう伸ばすかを考え るのが合理的思考であると思います。
 もちろん、いままでのスタイルを捨てきって、新しいスタイルを作るという選択肢 がないわけではありません。それを選ぶのは本人の決断です。
 私は、捨てきる必要はないと思います。要は、「攻め」を強化すればいいのです。
 今のスタイルができてきた背景には、おそらく練習相手の問題があります。"K"さん の高校の後輩2名と取らせてもらいましたが、攻めが弱く守りが強いという印象を 持ちました。試合後の感想では、私の守りが強いので、攻めではなく守りにはいった とのことでした。
 守りが強い相手の守りを攻めて崩してこそ「攻めがるた」の真骨頂なので、練習 ではそういう方向に考えてほしいのですが、勝敗ということを考えれば、守りあい というのも作戦のひとつではあります。しかし、結局は守りの中にも「攻め」や 試合運びに一日の長がある私の勝利となりました。
 これって、私と"K"さんの対戦にもあてはまる構図ではないですか?
 がちがちの「攻め」で、得意な守りもさせてもらえないなら、勝機を見出すには 「攻め合い」をするしかないのです。今の慶應の練習だと2年生と取ると守らせて もらえないという感覚ではないですか?周囲が相手の守りが強いから守ろうという タイプの選手が多い環境が、"K"さんのスタイルを作っていたのです。 (参考:「守りがるた」に関する一考察) ですから、周囲が守るなら「攻める」というタイプが圧倒的に多い今の慶應の環境に いるということは、「攻め」しか活路は見出せないのですから、「攻め」を磨く チャンスなのです。時に相手の渾身の攻めを防ぐ今まで培った「守り」を見せると、 相手は予定が狂い、そこにチャンスが生まれます。そこで、攻めてさらにチャンスを 広げましょう。最初は、かるたスタイルの変更で、一時的に枚差が今まで以上に開いてしまうこともありますが、いずれは元に戻り、さらには僅差→勝利という道筋に入れるようになるでしょう。
 そのためには、先輩たちと「攻め合い」を演じるのも大事ですが、4月から始めた 初心者や初級者相手に「攻め」まくって勝つという経験を積むことです。2年生に なってグ〜ンと伸びる選手は、新人の1年生に対して、実戦での攻めを経験し、 攻めてとる数を積み重ねることで「攻め」に開眼していくからなのです。
 先輩ととるのも大事ですが、自分が思い通りに攻めることができる相手と取ること も大事なことです。練習は質と量のバランスが大事ですが、「攻め」の体得には 実は「量」が大事なのです。(もちろん、あるレベルからは「質」も求められますが、 今の"K"さんには「量」が大事です。)
 "H"君とは違うアドバイスになりましたが、自分なりに咀嚼して嚥下してみてくだ さい。"K"さんの変化に気づいたら、また、コメントできると思います。

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 さて、SFC練習のいいところは、こうしてひとりひとりに対応した練習ができる ところにありますが、もっとにぎやかにいろいろな選手がつどって練習したいと いう思いもあります。
 札も用意したので、10人以上きても対応可能です。
 ぜひ、以前のような日曜練習なども再開すべく、"K"さん、"H"君には様々な練習 企画を立ててほしいと思います。OB・OGの中には、平日も含めてSFC練習情報をOBメーリスや掲示板・Twitterに流してほしいという声もありますので、期待に応えていきたいですね。
 慶應かるた会湘南藤沢支部としての"SFCかるた会"を盛況にしていってほしいと 思います。ふたりの活動を応援しています。
 自分たちがまず楽しんで、そして盛り上げていってください。
草々


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