シン・後輩への手紙(X)
Hitoshi Takano Oct/2023
一歩前進のために
前略 杉並大会D級の結果をお聞きしました。
結果として昇級した対戦相手に初戦であたり、ビハインドを追い上げて2枚差で敗戦したとのことですね。
ここのところの練習の成果や、モチベーションの高まりが、この2枚差に現れているように思います。
次につながる試合だったのではないでしょうか?
試合のあと、情緒的にきびしくなっていたようですが、いろいろ考えることができて、それはそれで次のステップにいくために必要な思索と感情であったのだと思います。
独自路線の定位置と札の送り、戦略により、初段に上がり、それはそれで一定の成果を上げていましたが、自ら、次のステップにいくために定位置の微調整をして、
札の送りと戦略をいわゆるセオリーに寄せてきたのは進歩だと思います。
その進歩が、よい練習環境を得て、さらに地力のアップにつながっていることは、私が客観的に見る以上に、自分自身としても主観的に実感しているのではないでしょうか?
定位置を自分なりに再調整するということができたという事実と、札の送りと戦略をいわゆるセオリーに寄せてきている事実から、
次のステップへのアドバイスが可能になったと判断し、以下の課題を提示したいと思います。
【課題】 相手の攻めを自陣の左に誘う
KH君はサウスポーです。今まで以上にその利を活かすことを考えてください。
右利きの相手に、右利きの対戦スタイルをさせずに対左の対戦スタイルをさせるということがポイントです。
相手の攻撃の重点をKH君側の右ではなく左に誘導するのです。
このことによって、慣れない敵陣左からの動きをさせるのです。
おそらく、相手はKH君の左を攻めて違ったら、自陣の右に戻るという縦の動きは無理なくできるでしょう。
しかし、敵陣左からの敵陣右への真横への転回と敵陣左から自陣左への斜めに引く転回の動きには慣れておらずに苦労することは必定です。
そのためには何をすべきか考えてみましょう。
(1)露骨に餌を撒く
相手が狙いたくなる仕掛けをするということです。
KH君は、私と同じで自陣で決まったトモ札を2枚並べずに左右分けもしくは段違い斜め分けで置きます。
このとき、左右分けだと、相手は基本的に右利きセオリーにのっとり、自分から見て左→右の動きで渡ります。
これでは、対右利きの身体の動きと変わりません。
そこで、自陣左に2枚並べて狙わせるか、最近得意の段違い斜め分け配置を自陣左で展開するのです。
当然のごとく、相手はトモ札2枚決まりをそちらの左に狙ってきます。
相手の攻めのポイントが対右利きと変わってきます。
この配置だと、やや自陣左側の配置札が多くなります。しかし、それを緩和させるのが我々得意の上段並べです。
上段中央から左側を使えば、それほど負担増にならないと思います。
それ以外にも相手が攻めやすそうな1字決まりや2字決まりを自陣の左側に置いて攻めさせるのです。
一例を上げれば、「ちはやふる」世代の若い子の大好物「ちは」などは左に置いて攻めさせましょう。
(2)損しても得を取る
自陣左の1字決まり札や2字決まり札は、序盤は無茶苦茶早く取る必要はありません。
相手がちゃんと抜きに来れば抜かれるくらいのスピードでいいのです。
相手に抜かれてください。ここは攻めれば抜けると相手に成功体験を与えて、相手の攻めの意識をKH君の左に植え付けるのです。
ただし、相手が攻めてこない場合や遅い場合は、KH君の右に行ってから左に来たような場合には、しっかり拾うことが大事です。
そして「ラッキー」でも「拾った」でもいいので、さりげなく声を出して、自分が決して早くないことを相手にアピールします。
これで、相手はKH君の左を攻めることを意識します。
序盤にここを取られるくらいの「損」は、今後の展開で「得」を取るために必要な投資だと思ってください。
こうした一時的な「損」をする作戦を助言できるのも、KH君の地力が伸びてきたからこその話です。
(3)自陣左への誘いの果実を得る
相手が、KH君の左起点の動きになってきたら、次はサウスポーの利を活かす時です。
相手からみて右→左の動きが必要なKH君の右の札をしっかり守ることです。
敵の手がKH君の手の甲にあたって、邪魔されてとれないという感覚を与えましょう。
ここにある3字決まり以上の札などは、そうした感覚を相手に与える上で大事な札です。
空札の時でも、手がぶつかる感覚を相手にあたえられれば、なお良いです。
この感覚を意識すると、相手は手があたらないスピードとか取りの軌道を意識します。
するとKH君左への動きが遅くなります。KH君は自陣左の札を拾える可能性が高くなります。
そうすると相手は左を意識し、また、右で守られる。この負のスパイラルに相手を誘い込めばしめたものです。
(4)仕上げとして相手の右を抜く
相手が、敵陣の攻めをあれこれ考え出してくれた段階で、敵陣の右へサウスポー独特の相手の内側から払いの一枚外側から攻めができると
さらに相手にダメージを与えることができます。一枚外側から払うのもよし、まっすぐに札を突くのもよしです。
自陣が減ってきたら、攻撃の手をゆるめず、相手陣の左側なども意識しましょう。自陣の札の枚数は少なくなり、
攻められるリスクが減っているわけですから、相手陣の左右ともに勢いのある攻めができるはずです。
こうなると自陣が出ても不思議と自然に戻れたり、札を拾えたりするものです。
いかがでしたでしょうか?
序盤のビハインドをある程度覚悟した上での作戦です。
最近のKH君の中盤から終盤にかけての追い上げ力を認めた上でのアドバイスです。
本当は、先行逃げ切りが良いのですが、それができないときは、特に中盤での逆転がキモとなります。
ここでの逆転のきっかけは、自陣のキープで相手の攻めのリズムを崩し、相手のお手つきの際にはたたみかけていくことです。
そして、流れを引き寄せてください。
同級相手に、そして一つ上の級の相手には、ある程度通用できると見込んでいます。
サウスポーパワーを発揮してください。
ではまた、練習場でお会いしましょう。
草々
次の手紙へ
前の手紙へ
手紙シリーズのINDEXへ サウスポー論のINDEXへ
☆ トピックへ
★ 私的かるた論へ
☆ 慶應かるた会のトップページへ
★ HITOSHI TAKANOのTOP PAGEへ