殷富門院大輔

みせばやな雄島の海人の袖だにも
   濡れにぞ濡れし色はかわらず


決まり字:ミセ(二字決まリ)
 「松島の雄島の漁師の袖でさえも波に濡れても色がかわらないというのに 私の袖の色がかわってしまうほどの涙をあなたに見せたいものだ」という 歌の意になるだろうか。
 袖を濡らすというのは、涙で袖が濡れるということで、泣いていることを 示す和歌によく使われる表現である。
 袖の色が変わるほどの涙というのは、血の涙だというのだが…。
 実は、この歌は、かるたの試合で負けた悔しさに浮かぶ涙をイメージして しまう。高校の時、クラスマッチという大会で負けたときにチームメイトの 好きな札でもあったせいか、その時にこのチームメイトの流した涙をみたとき にこの歌が浮かんできたということが原因であるかもしれない。
 その後、長きにわたって、かるたの勝負の世界で、多くの涙を見ているが、 その時頭に浮かぶのは、この歌なのである。
 ちなみに「み」の音で始まる札は百枚の中に5枚ある。「みかの」「みかき」 の三字決まり2枚と、「みよ」「みち」「みせ」の二字決まり3枚である。

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2008年3月  HITOSHI TAKANO