寂蓮法師

村雨の露もまだ干ぬ真木の葉に
   霧立ちのぼる秋の夕暮れ


決まり字:(一字決まリ)
 俗名は、藤原定長。俊成の兄弟俊海阿闍梨の息子である。しかし、歌才を認められ、叔父俊成の 養子となる。しかし、俊成49歳のときに実子定家が生まれる。定家が長じて、その歌才を発揮する におよんで、出家することになる。
 百人一首の中に「秋の夕暮れ」で終わる歌は二首ある。この歌と良暹法師の「寂しさ」の歌である。
 この二首もよいが、しかし、世の中では三夕の歌として次の三首が有名である。「秋の夕暮」は歌人 の詩情ををよほどくすぐるのだろう。

<三夕の歌>
 ・見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮(定家)
 ・さびしさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮(寂蓮)
 ・心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮(西行

 この三首の作者三人とも百人一首の作者である。しかし、この三首は百人一首に採られてはいない。 それが定家の選択であった。

 さて、従兄弟の寂蓮が亡くなった時、定家は明月記にこう記している。
 「哀慟の思ひ禁じ難し」と。

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2008年4月20日  HITOSHI TAKANO