良暹法師

寂しさに宿を立ちいでて眺むれば
   いづこも同じ秋の夕暮


決まり字:(一字決まリ)
 良暹は、叡山の僧であった。父祖については不詳である。山城国の大原の里に住んで いたと伝えられる
 歌詠みとしてはその実力を認められていたというエピソードがある。ある時、 源俊頼が友人たちと大原を通った時、良暹の家の前で、俊頼は馬を降りて敬意を表してから 通り過ぎていったと清輔の袋草紙は伝える。

 歌の意味は、説明不要のわかりやすさであろう。ただ、ここで秋の夕暮れがいづこも同じ と言っていることは、何かということは気になる。自然に読めば「寂しさ」だということだが、 他にも何かがあるような気がしてならない。それはいったい何なのだろう。読む人それぞれに異なる のかもしれない。読む人の心を映す歌なのではないだろうか。

 さて、百枚の中で同じ音で始まる札のほかにない一音で取ることができる札は7枚あり、 この「寂しさに」の歌もそのひとつである。昔から、一字決まりの7枚は「」 と覚えることになっている。
 それ以外に良い語呂合わせがないか考えてみたことがある。ところがなかなか良い 語呂がないのである。イロハ順で並べると「ほむふさめせす」、五十音順だと「さすせ ふほむめ」、ABC順だと「ふほめむさせす」だが、これでは語呂合わせにもなりはしない。 アナグラムを考えても、どうしても「娘」「房」などの単語が出てくる。もうこうなると この単語に縛られてしまう。結局は「むすめふさほせ」以外の語呂合わせは思いつかない のだ。それが、昔からのずっと言い継がれてきた語呂合わせの力なのかもしれない。

 これで96リンク。残すところあと4首。

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2008年5月4日  HITOSHI TAKANO