不定期連載カルタ小説
「さだめ」
執筆ノート
本編は、私の九作目の小説である。
八作目の発表から16年がたつだろうか。間があいてしまったことには様々な理由がある。
この間、公私ともにいろいろなことがあったのだ。仕事関係では、数回の人事異動。両親の逝去。家族と自身の健康問題。
そして、かるたに関して言えば、練習会場の管理者にならざるをえない中での練習会の運営。
また、私にとって「弟子」と称する関係性ができたこと。
だいたい、大学のかるた会では、サークルの先輩・後輩の関係の中でさまざまな先輩がさまざまな後輩に指導をしていくので、
周囲が師弟関係と言い、後輩が先輩を「師」と仰ぐ関係はなきにしもあらずだが、
いわゆる「道場」などで生じる純然たる師弟関係というものはなかなかに育つものではない。
そんな中、入会から半年ほどでサークルを離れ、無所属で活動してきた後輩がいた。
当時、同じキャンパスで勤務していた私が練習会を用意し、稽古をつけ、指導した中で、紆余曲折を経て、私を「師匠」と呼ぶようになったのが、一人目のケース。
そして、もう一人は、15才のときに「ちはやふる」のアニメから興味を持ち、私の英文ウェブサイトを見てインドからE-Mailで連絡を取ってきたインド人。
一人練習の動画などを細かくチェックし、質問にこたえ、アドバイスを続けてきた関係で、わたしを「先生」と呼ぶようになった。
その後、大学を卒業すると日本の浜松にある企業に就職した。残念ながら、1年たたずに帰国してしまい、1試合しか練習できなかったが、師弟としての交流を深めることはできた。
これが、二人目のケース。
こうした新たな「かるた練習会」と「かるた選手」との関係性の中で、定位置というか、札の配置の指導について考える機会が増えた。
若い選手とともに配置問題を考える中で、最後は当人の自主的判断に委ねていくことの重要性は、体験的におおいに感じるところである。
そういうわけで、定位置・札の配置に悩む初級者が、いろいろな人との練習などをとおして、自分なりに考えていくという内容の物語とした。
ストーリー性よりも、定位置、札の配置の人それぞれの考え方の紹介を主眼とした小説になっている。
さらに、全世界的なパンデミックとしてのCOVID-19によるコロナ禍という事象があり、それにより、かるた会の活動にも影響があったことを記憶に留める意味ももった作品とした。
ご高覧いただければ幸いである。
「さだめ」 プロローグ
「さだめ」 第1章 定位置
「さだめ」 第2章 OBが来た練習会
「さだめ」 第3章 OG登場
「さだめ」 第4章 情報交換
「さだめ」 第5章 OBからの初金星
「さだめ」 第6章 定位置は衣装?
「さだめ」 第7章 昭和の香り
「さだめ」 エピローグ
本文中の競技かるたに関する用語・用字において、一般社団法人全日本かるた協会で通常使用する表記と異なる表記がありますが、ご了承ください。
この小説はフィクションであり、登場する団体、人物、設定は架空のものです。実在の団体、人物とは関係のないことをおことわりします。
著者
高野 仁
Copyright:Hitoshi Takano(2023/Jun)
E-Mail:takano@sfc.keio.ac.jp
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