<百人秀歌>
河原左大臣
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに
みだれむと思ふ我ならなくに
「乱れそめにし」(一首)←→「乱れむと思ふ」(秀歌)、他の歌の相違と異なって
古体の表現という具合の変化ではない。明らかに表現の変化である。
小倉百人一首の「乱れそめにし」は「そめ」に「染め」と「初め」の意が掛詞になっている
し、序詞である第一句と第二句に使われている「しのぶずり」との縁語でもある。
百人秀歌のほうでは、これらの技巧が、一句・二句が「乱れ」の序詞になっているだけに
とどまってしまう。
これを考えても、小倉百人一首のほうが、歌に華やかさを加えているように思える。
河原左大臣源融という人物のもつ華やかさを考えれば、歌も華やかなほうが作者にあうように
感じる。
結局、こうして、歌の表現を私撰集に採歌する際の変更は、作者の詠歌意図を超えたところ
で撰者である定家の意図にゆだねられているようなのである。
まさに「用捨在心」である。どの歌を採るかだけではなく、採った歌でどの言葉を使うかに
おいても、用捨在心であったのだろう。
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2008年6月6日 HITOSHI TAKANO