TOPIC "番外編"
全集中?
〜“競技かるた”と「集中」〜
Hitoshi Takano Nov/2020
「鬼滅の刃」の人気がすごい。映画の興行収入でもこれまでの収入ランキングの順位の中で、グングンと順位をあげている。
菅総理までが、「鬼滅の刃」のセリフを用いて「全集中の呼吸で」というフレーズを国会答弁で使っている。
私も、この「鬼滅の刃」ブームで聞くまで「全集中」なる言葉を知らなかった。
あいにく漫画もアニメも見ていないので詳しいことはわからないが、「全集中」というよりは、「全集中の呼吸」という「呼吸」法に軸足のある言葉のようだ。
「鬼滅の刃」の週刊誌連載のはるか前から、「かるた界」の中では、「集中!」という掛け声が使われていた。
私が2009年7月に書いた「掛声考」にも「集中!」という掛け声を紹介している。
自分に対して、掛け声をかけたから集中できるのかというと、そういうものではないが、団体戦などでは、チームメイトへのための声掛けの一環で「集中するよ!」とか、
「集中していくよ」などの掛け声もある。「はい、集中!」とか、「集中!」というだけで、団体戦においてのそのチームのリズムになっているケースもある。
掛け声の効用については、評価が分かれるが、本当に「集中」を意識するときは、さきほどの「鬼滅の刃」のセリフではないが、「呼吸」を意識することが多い。
人それぞれではあるが、深呼吸する選手もいるし、意識して一定のリズムで「息を吐き、息を吸う」というような呼吸法をする選手もいる。
競技かるたでは、一試合にそれなりの時間がかかる。読みと読みの間には、「集中」する時間と「集中」を解く時間を交互に持ちながら、暗記をしたり、作戦を立てたりしている。
そして、読みが実際に始まってからの「集中」が、競技かるたにおける「集中」の最たるものである。
それは、読手の発声する上の句の音に対するものであり、選手は、札が読まれるたびに、この「集中」を繰り返すのである。
この瞬間の「集中」に向けての各選手は、それぞれ独特の呼吸を無意識のうちにしているのではないだろうか。
余韻から第一音、決まり字の音に至るわずかな間、呼吸を止めている選手が多いと思うが、呼吸を止めるまでのルーチンは結構選手によって個性があると思う。
前の歌の下の句が読まれている間、それぞれの選手にそれぞれの吐く息・吸う息の呼吸のタイミングというかリズムがあって、息を止める瞬間につなげている。
実際に選手に聞いてみると、無意識に行っているがゆえに、言語化して説明するのに考えたり、実践してみたりの時間が必要な場合がある。
興味のある方は、まずはチームメイトを手始めに、聞いてみてはいかがだろうか。
「集中」という掛け声はともかく(今に「全集中でいくよ!」などという掛け声が団体戦の大会で出てくるかもしれないが)、
競技かるたに「集中」は必要不可欠なのである。
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