TOPIC   "番外編"

DDDD

〜"PDCA"の代わりに〜

Hitoshi Takano FEB/2021


 私は、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で、2回にわたって通算15年2か月仕事をしているが、多士済々の卒業生と今でも繋がりがある。 その中の一人に杉山大輔君(慶應義塾流の表記で「君」づけで書かせてもらう)という経営者がいる。 彼は、2019年に自由国民社から刊行された"DDDD 「行動」だけが奇跡を起こす"という本を著している。



 タイトルの「DDDD」は、この本から取っている。ちなみに「DDDD」は「ドゥドゥドゥドゥ」と読む。「Do,Do,Do,Do」ということである。

 人口に膾炙している言葉だと思うが、「PDCA」という言葉がある。
 大学の認証評価などでも、各大学は「PDCA」サイクルを回しているかなども評価のポイントである。
「Plan→Do→Check→Action」
 この4つ目は「Action」で言われることが多いが、全部動詞で揃えるべきで、「Act」でないとおかしいという指摘もある。 まあ、いろいろな意見はあるが、こだわらないことにしよう。  「計画(Plan)」して、「実行(Do)」して、「評価(Check)」して、「アクション(Action)」するという業務等における一連の流れを言う。
 あえて、「アクションする」と書いたが、様々な解説には「改善する」と書かれている。
 私は、このアクションが「改善」であるか、それとも「改悪」であるか、はなはだ疑問なので、「アクションする」と書いた。 もちろん、行為者は「善」と思って「Act」するのだろうが、それが「善」か「悪」かは、二回り目以降の「Check」を待たなければならない。
 「Check」も「評価」と解説されることが多いようだが、「点検」という表現のほうがしっくりくるときもある。 「点検・評価」と並列されることも多いが、私の中では、「点検」があって、そしてその点検結果という客観的事実をふまえた上での「評価」なのである。 点検であれば、それは客観的事実(データや事象など)の指摘であるが、「評価」というと評価者の評価基準の差や主観がはいってしまう。 ある人にとっては、「悪」だから次のActは「改善・改良」となり、ある人にとっては「善・良」だから次のActは「改悪」になってしまうかもしれない。 (「善・良」だけども、もっと良くする意味での「Act」というケースもあるだろうし、すでに「善・良」だから「何もしない(現状維持)」というActをするという言い方もできる。)

 この「PDCA」の考え方は、当然、「かるた会」という組織の運営に適用してもよいし、「かるた」の戦略や戦術、練習方法などの工夫において利用してもよい考え方であろう。
 さて、この「PDCA」も揶揄されることがある。
 杉山君の著書によると
Plan Delay Cancel Apologize
というらしい。
 「じっくりと計画を立ててやると遅くなり、その結果、中止となり、謝りにいくことになる」ということらしい。

 ここまで、読んでいただければ「DDDD」の意味が、おわかりのことと思う。「PDCA」ではなく「DDDD」なのである。
 「Do,Do,Do,Do」である。「行動する」ことにつきるのである。「DDDD」は、杉山君の造語であるが、「PDCA」に悩まされる立場にとっては、実にわかりやすい標語である。
 「楽天」のオフィスには、「スピード!スピード!スピード!」という標語が貼ってある。これも、「DDDD」と共通するイメージだ。 楽天の三木谷社長は、一橋大学の出身だが、創業に関わったメンバーにはSFCの出身者も多い。 私は、SFCの開設から8年2か月仕事をしていた時、環境情報学部の斎藤信男教授(のちに環境情報学部長、慶應義塾常任理事。名誉教授)に「SFCは走りながら考えるんだ」と言われた。 この「走りながら考える」も、「DDDD」や「スピード!」三連呼につながるイメージの言葉だ。
 私は、たしか、斎藤教授に「たまには立ち止まって振り返らせてください」と言った覚えがある。 どういう返答があったか言葉は正確に覚えていないが、一蹴されたことだけは覚えている。
 こうした発想は、SFCの卒業生を突き動かす何かの一部なのかもしれない。

 今回、このテーマをトピックに取り上げたのは、SFC出身者で私のかるたの練習相手を務めてくれている後輩が、いろいろ考えすぎているのではないかと感じたからだ。 (手紙シリーズ参照
 考えすぎず、感性のままにかるたを取ってもいいのではないかということを書いたのだが、もう一つ加えれば「DDDD」だと思ったのだ。
 自分の戦術を律儀に実行しようとして、何か無理に「PDCA」をしているようなかるたを取っているように思えたのだ。
 きっと彼は、何度も何度も自身のかるたのPDCAサイクルを回してきたのだ。  その結果、堂々巡りというべきか、そのサイクルから抜け出せずにいるように思うのだ。必要なのはブレイクスルーであり、そのきっかけをつくらないといけないと感じたのだ。
 「PDCA」の「P」も「C」も「A」もやめて、ひたすら「D」だけをする中で、何かが見つかるのではないかと思うのである。 SFCの卒業生である後輩には、きっと合う方法のような気がするのだ。

 最後に本稿の読者の皆さんの中にも「PDCA」の呪縛にとらわれている方がいれば、ぜひ一度「DDDD」を試してみるようお勧めする。

Do! Do! Do! Do!

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