新 TOPIC
札の裏
〜識別の文字〜
Hitoshi Takano Nov/2022
TOPICが、本編100回、番外編100回となり、タイトルを「新TOPIC」として次なる100編に向けてスタートを切ることになった。
新しいスタートとしての第1回の話題は、何にしようかと2週間ほど悩んでしまった。
たまたま、新しい取札を練習用におろすこととして、札の裏に他の札のセットと混ざらないための識別のための文字を書く作業をしていて、
この札の裏の文字について書こうと思いついた。
「札の裏」の話で「裏札」ではない。
競技かるたでは、1回の練習や試合で複数組が同時に同じ空間で対戦を行う。
その際、その組数の数の取札のセットを使う。
ご存じのとおり、競技かるたでは払い手が多用され、札を払うことが多いため、出札が読まれた後は、払った札を回収に行かなければならない。
この時に、別の取札のセットの札と混乱しないように、識別のために取札の裏には文字や数字、またはその組み合わせが書かれている。
時としては、まれではあるが、それが記号であったり絵であったりすることもある。
同じ練習会場・試合会場で、この札の裏の文字が同じにならないように気をつけながら、この札の裏の文字を決める。
新しい取札を練習デビューさせる前に、この文字を決めて書くのである。
大学のかるた会などで、卒業する先輩が後輩たちの練習に札を寄贈するような時に、その卒業生にこの文字を決めてもらうこともあれば、
後輩たちが先輩の名前から一文字選んで書くこともある。うちの会だと就職先の企業名を書いた代もあった。
注意すべきは、すでにある札とダブらないこと、音が重ならないこと、競技する人が普通に読めることなどが大事である。
すでにある札とダブらないというのは識別のためだからわかりやすい理由だと思うが、
音が重ならないとか普通に読めるというのはどういうことなのかと疑問に持たれる方もいることと思う。
例をあげて説明しよう。
札を払って飛ばした時、探しても見つからないと「○○の札はありませんか?」と札の裏に書かれている文字を声に出して一緒に練習している他の組合せのメンバーに確認する。
他の組の札を間違えて自分たちのところに並べているケースもあるからだ。その時、同じ音だったら、どちらの札かがわからない。
例えば「慶應」という札と「京王」という札や「KO」という札が使われていたとしよう。
「ケーオー」の札飛んでいませんか?と言われた時、どの札のことかよくわからない。
いちいち、電鉄のケーオーの札とか、大学のケーオーの札とか、アルファベットのケーオーの札というのは、札を探すほうも面倒である。
これが、音が重ならないようにすることの意味である。
普通に読めるということは、記号や絵のときに発生しやすい。
例えば「*」だと、「アスタリスク」と知っていればよいが「星印」などと読んでしまうと「☆」も該当するし「★」も該当する。
ある先輩がサインのように使っていた記号を札の裏に書いた時には、そのことを知っている人は「Iさんマーク」とか言って理解していたが、
そのことを知らない他の会の人は、「なんかよくわからないマーク」とか言って困っていたこともあった。
「絵」もそうである。書いた本人は「虎」の絵を描いたつもりでも、札を使っている人たちは「猫」の絵だと思っていると、混乱を招く。
幸いうちの会のケースでは、「キューピー」の絵の札があったが、これはみんな「キューピー」の札と言ってくれていた。
もし、「キューピー」の絵の札とアルファベット2文字の「QP」の札が混在していたら、面倒なことになっただろう。
記号や絵でなくても、難読漢字などとすると読めない人も出てくる。出身高校名などを書くケースだと「膳所」とか「石動」などが正しく読んでもらいづらい。
誰でも読めそうな「中」も、麻雀好きは「チュン」と読んだりするし、「平和」を「ピンフ」と読んだりする。
実はこれは麻雀関連しばりで札の裏の文字を決めたケースで、その他にも「七対子」(チートイツ)、「一盃口」(イーぺーコー)などもあったと思う。
したがって、実は「チュン」も「ピンフ」もそちらの方が正しい読みなのだが、紛らわしいし、麻雀を知らない人にとってはいい迷惑かもしれない。
さて、私が最初に自分で買った札の裏に書いたのは「1171」という数字である。これは、大学の卒業記念で買って、大学4年間で取ったかるたの対戦数だった。
そのほか、卒業の際にお世話になった会に寄贈したのは、「高」という文字の札と「ダルマ」の絵の札である。
ダルマの絵は、ゴム版で作成してスタンプで百枚押したものだった。誰が見てもダルマにみえたので、混乱はなかった。
今世紀になって、自分で練習会を企画する機会があったときに実際に書いた札の裏の文字について説明してみようと思う。
基本的にアルファベット3文字を基調にしようと考えた。
湘南藤沢キャンパスでの練習会用に最初に用意した札は、私が好きだった車田正美さんのボクシング漫画の名作「リングにかけろ」(略称:リンかけ)にちなんでつけさせてもらった。
最初の3組には「SRT」「STD」「WTR」とつけた。これは、登場人物がはなつスーパーブローの名前で、アルファベット3文字でかけるものである。
「SRT」は「スペシャル・ローリング・サンダー」(志那虎一城)、「STD」は「スカイ・トリプル・ダンシング」(イカロス)、「WTR」は「ウィニング・ザ・レインボー」(高嶺竜児)である。
(スーパーブローの名前のあとの括弧内は、そのパンチの使い手の名前である。)
参加者が増え、そのあと買い足した2組にも、スーパーブローの名前をつけようかと思ったが、リンかけのスーパーブローは略称がアルファベット2文字のものが多い。
日本ジュニア代表チームの5人だとすでに紹介した志那虎と高嶺以外では、剣崎順の「GM」(ギャラクティカ・マグナム)「GP」(ギャラクティカ・ファントム)、
香取石松の「HV」(ハリケーン・ボルト)「ST」(スパイラル・タイフーン)、河合武士の「JU」(ジェット・アッパー)「JL」(ジェット・ラベンダー)などの
スーパーブローがあるのだが、アルファベット2文字である。ちなみに高嶺はさすがに主人公だけあって、
「WTR」以外にも「BH」(ブーメラン・フック)「BT」(ブーメラン・テリオス)「BS」(ブーメラン・スクエア)という名前のついたブローがある。
対戦相手の外国人選手のスーパーブローも略すと2文字が多い。ギリシャチームのイカロスのSTDは珍しい3文字なのである。同じギリシャチームでは、
テーセウスの「ハートブレイクキャノン」、アルテミスの「ムーンライトヘブン」も3文字っぽいが、「ハートブレイク」、「ムーンライト」は、
「・」で区切るべきでない一単語だろう。3文字いけそうなのは、フランスチームのナポレオンの「ロイヤルデモンシード」で、これなら「RDS」でいけそうだ。
2文字はやめて3文字しばりを守ろうということとしたが、2組の補充で1組はスーパーブローだが、もう1組がそうでないというのも、なんか中途半端な感じがする。、
2組を同系統の3文字で揃えようと考えるとスーパーブロー以外から選ぶのも一策であり、メインの登場人物の名前にちなんで「JUN」と「RYU」とした。
「JUN」は「剣崎順」から、「RYU」は「高嶺竜児」からとなる。こうしてこの5組は「リンかけ」しばりということで成立した。
三田キャンパスで終業後や土曜日に「慶應義塾職員かるた会」主催で練習を行う「三田婦人室」は、また3文字基準は異なった。
まず、最初に用意した3組は、「SFC」「CPS」「ORF」である。
「SFC」は「湘南藤沢キャンパス」、「CPS」は「カルタ・プレイヤーズ・ソサエティ」(慶應義塾職員かるた会のこと→詳細はここをクリック)、
「ORF」は「オープン・リサーチ・フォーラム」(SFCの研究活動等を対外的に発表するイベント)である。
立ち上げメンバー2名のそれまでの業務の関係性や練習主体の組織の略称から選んだ。
このあと、参加者増などもあり、二組買い足した。それが「FJS」と「SAS」である。
「FJS」はベタで練習会場の「婦人室」をローマ字にして「Fu-Jin-Shitsu」に由来する。これは、練習会案内用のメーリングリストが「fjs-karuta」となっていることで採用した。
「SAS」は、英3文字を考えあぐねていたところ、
私が治療を受けている「Sleep Apnea Syndrome」に3文字の略称があったので、
エイヤッと決めてしまった。もうちょっと、2組の関係性を考えるなど工夫すればよかったと、今では後悔している。睡眠ネタあり、症候群ネタあり、
三田キャンパスの施設関係のローマ字ネタあり、考えようはあったはずだ。
上記は練習会場に常置するものとして用意した札だが、練習会を公共施設などの会場を借りて行う時に持っていくように用意した札が、買い足し、買い足しして5組ある。
婦人室練習の3文字候補にしていたが、主要メンバーから却下されてこちらに使用した。湘南藤沢キャンパスや大学業界に関係のある3文字である。
「GPA」:Grade Point Average(学生の成績評価値)
「COE」:Center Of Excellence(卓越した研究拠点)
「USR」:University Social Responsibility(大学の社会的責任)
「W3C」:World Wide Web Consortium(World Wide Webで使用される各種技術の標準化を推進するために設立された標準化団体。SFCの研究室が日本の事務局を担った)
「GAO」:Graduate Admissions Office(大学院版AO入試)
これ以外に、他会の練習に行くときに、「札が足りないので参加される方が札をご持参ください」と言われる時があるので、それ用に2組用意している。
これは、間違えられないようにわかりやすくとの意図から、英字3文字はやめて、所有者の分かりやすい漢字にした。
1組は「高野」、1組は「仁」である。たとえ、練習会場に忘れたとしても、私の札とわかってくれるだろう。
そして今回、このテーマを書くきっかけをつくった札の裏の文字が「TAK」と「SDGs」である。
「TAK」は、“Thousand-Arms Kannon”(千手観音)である。今年の7月に逝去した大津あきのた会のI氏に私が1980年代後半につけたニックネームにちなんだ。
I氏の手の素早い動きになすすべなく敗れた時に感じた印象からのネーミングだった。英訳は適切でないが、翻訳ソフトなどで約すと3文字を超えてしまうので、
この訳でまとめさせてもらった。
そして、もう1組は、3文字原則を小文字1文字超えてしまったが、もはや避けてとおれない持続可能な開発のための17の国際目標である「SDGs」である。
“Sustainable Development Goals”は、2015年9月25日に国連総会で採択された。2030年までに達成することを目標としている。
この2組は、コロナ禍により札の使用頻度(1試合ごとに使用札をかえるという指針)に変化があり、三田婦人室にあらたに投入して利便性を高めようという意図で用意した。
婦人室の利用者には、I氏の遺志を継ぐI氏の弟子もいるし、婦人室の参加者にはSDGsを自分事として感じてほしいし、
この2組の札が、一日も早く婦人室にはやく馴染んでくれると嬉しい。
"新"TOPICも、引き続きみなさんに読んでいただけるように書き続けていきたい。
ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
おまけ
私が持っている札の中に、「競技かるた制定100周年記念かるた」がある。
この札の裏には、写真のようなデザインが最初から印刷されている。さすがにこの札には識別用の文字を書いていない。
いまのところ、同じ練習会場で、この札がバッティングしたことはないので、充分識別できるのだ。
ただし、裏貼りの紙の色が緑色でないため、使用者から違和感があるといわれ、よほど札が足りない時以外は使うことが少ない。
しかし、札は「使ってなんぼ」との観点から自宅での一人練習にはよく使っている。
追記 現在「SRT」と「WTR」の札の所在が不明である。すでに卒業したメンバーが現役の時に合宿で使用すべくSFCから持ち出したようだ。
合宿で使う札は、下級生に分担させて必要な数を持ってこさせるからだ。そして合宿の最終日に、下級生に持って帰って日吉の練習場に戻しておいてということがある。
持ってきた組数だけ持ち帰らせるので、そのときに札裏の文字は意識していないことが多い。
全ての札が日吉の札であれば、それでも問題ないのだが、SFCの常備札というとその方式だとSFCの札が日吉に持っていかれてしまう。
おそらく、その時に持ち出した本人が責任をもってSFCに返却せず、他の札と同じようにしてしまったのだろう。
その持って帰った下級生が日吉に戻していれば、探しようはあると思う(コロナ禍で日吉の練習場に行ってないので自分ではチェックのしようがない現状だが)。
しかし、その下級生が合宿を境に練習に来なくなってしまって札の返却もしていなければ、「アウト」としか言いようがない。
札は使うためにあるのだから、合宿などでつかうということで持ち出すことはあってもいいが、必ず責任をもって練習場に返却してもらわないと困る。
その前に、管理者である私にいつからいつまで「札裏」が○○○の札をこういう理由で借りますと連絡し、返却したら「返却しました」と報告すべきである。
(実際にいう時は、いちいち札裏が○○○などとは言わない。○○○の札という。札裏に書かれた識別の文字が、その取札のセット1組の名称になっているのである。)
以前、同様に合宿に3組もっていったSFCメンバーは、私に事前に断りをいれ、自分で責任をもって持って行った3組の札を次のSFC練習会までに返却した。
これがノーマルなのだと私は考える。
(ちなみに、11月の三田祭で、「WTR」の所在が判明し、返却の目途がついた。N君、Kさん、ご苦労様。)
私は、これらの常備札があることを前提に練習会に集まる人数と札の過不足をチェックし、足りなさそうなら自分で家から予備札を持っていくなり、
他の当日参加メンバーに○組持ってきてと頼むなりするわけだ。
その時に、持ち出されていることを知らないと、当日になって札が足りないということになり、練習計画に支障がでてしまう。
こうしたことを考えて行動してもらいたい。
最近では、三田婦人室の「ORF」の札を断りなしに持ち出した輩がいた。私のほうで、捜索をかけて持ち出したメンバーもわかり、
11月12日に返却することも分かっているが、持ち出しの際の連絡は励行してほしい。
SFCも三田婦人室も最初は3組購入し、あとから2組買い足している。「5組」を常時準備するというのが目標だったからであり、いっぺんに5組買わなかったのは、
予算的なことや京都出張で大石天狗堂で購入する際の他の荷物との兼ね合いもあったからだ。
「5組」という数字を目標としたのは、SFCの柔道場においては、団体戦(5組)を想定しての数字であり、婦人室においては練習可能な最大数が5組だったからだ。
(ちなみにコロナ禍前。コロナ禍下の現在は4組)
特にコロナ禍のガイドラインでは、毎試合札を変えて使うことが指示されている。
コロナ禍でSFCでは練習ができなかったので、SFCの残りの札を婦人室に移動して、フル参加でも対応可能なようにしているが、老朽化して劣化した札もあり、
決して札に余裕があるわけではない。そういうわけで今回新しい札を2組追加したのである。
札がたくさんあるから1組くらい持ち帰ってもいいだろうという感覚は勘弁してもらいたい。
管理者としては、あるはずのものがないと気になって仕方がないのである。
最低限、管理者に対して「いつから」「いつまで」「何のために」「何組」「○○○の札(と◎◎◎の札…)」という連絡をし、持ち出した人間が責任を持って返却してほしいのである。
練習場に常備してある札や自動読上機などの道具は、かるた会の公共財という認識でいてほしい。
新シリーズの初っぱなに、ほぼ愚痴っぽい話で申し訳ないが、管理者の本音かつ切なるお願いである。
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