新 TOPIC

札分けの新しい形

〜指定数字は三つ〜

Hitoshi Takano Aug/2023


 以前「私的かるた論」において「札分け論〜効率化の一側面〜」というタイトルで、 練習などで複数組が同じ札で練習できるようにあらかじめ使用する50枚の札を「札分け」することについて書いた。
 カラ札が共通なので、進行が早くなり、時間短縮につながるというわけだ。

 大石天狗堂の公定札で左下に記されている□の中の数字の「一の位」や「十の位」を指定し、五つの数字を決めて、 その数字により札分けをするという方法を紹介した。
 それとともに、恣意的に「ある一音目」を排除したり、組み込むことができることも指摘した。
 実際、そんな数字を覚えて札分けの数字五つを指定するということは、札分け方式を練習に取り入れている会でもしないだろうが、 昨今では札の傾向を覚えてしまうという声も上がってきているようである。
 たとえば「ゼロ」を一の位で指定すれば、「これ」「わび」「ありあ」「しの」「きみがためお」「おおえ」「さ」「ながか」「みせ」「もも」と 覚えてしまっている選手もいるということである。
 そして、「一の位」よりも「十の位」のほうが、覚えている傾向が強いようである。 連続する数字の十枚というのが一の位よりも認識しやすいということであろうか。 そして、前半の数字(十の位で「ゼロ」から「四」)、後半の数字(十の位で「五」から「九」)が多いというだけでも、 どのような札が来る傾向かと予測しやすいということも昨今目だっているというのだ。
 純粋に競技かるたの世界で小倉百人一首を第一音で区分して覚え始めた選手は、それほど番号で前半だの後半だのと意識はしないかもしれないが、 私のように高校の授業で、今回の試験では、1番から20番の歌から出題しますとか言われて、サブテキストの小倉百人一首解説を順番に覚えたような人間にとっては、 教科書のどのあたりに載っている歌だとか、1学期の中間テストの時に覚えた歌だとか、3学期の期末試験のときに覚えた歌だとかの印象が特に強いのかもしれない。

 この間は、ある会の練習にいったら、連続する数字50を指定して札分けしたこともあった。
 要するに「26番」から「75番」までといった指定の仕方である。
 一の位、十の位とはまた違った趣きではあるが、どちらかというと十の位のバリエーションといった感じで、学校教育で歌の順番に覚えた人間にとっては、 普通の十の位を五つというよりも、どの歌が入ってきていそうかわかりやすい指定方法である。

 こうした背景から、新しい札分けの方法があると我々の三田キャンパスの練習会に参加してくれたOBの一人が教えてくれた。 どこの会で取り入れられていたか忘れてしまったが、分け方は次のとおりである。

 「ゼロ」から「九」までの数字の中から任意の三つを指定する。
 一の位もしくは十の位にその数字がある札を抽出する。
(百の位は無視:といっても「もも」1枚だけだが)
たとえば、「2」「5」「8」と指定したら、一の位に「2」のある札「はるす」「あまつ」……「おも」「わがそ」の10枚、 「5」のある札「おく」「きみがためは」……「よも」「おほけ」の10枚、「8」のある札「わがい」「す」……「なにわえ」「かぜそ」の10枚が 一の位として該当する。 そして、十の位として、「2」は「わび」「いまこ」「ふ」「つき」「この」「なにし」「をぐ」「みかの」「やまざ」「こころあ」の10枚が該当する。 ただし、一の位で抽出された「ふ」「なにし」「やまざ」の3枚は重複するので、実際には7枚が対象となる。 これは、十の位の「5」も「8」も同様の理屈で、7枚ずつが対象となる。
 この方法で、抽出すれば、″(10×3)+(7×3)=30+21=51″となり、51枚の札分けが完成する。
 そして、50枚にするために、この51枚から「任意の1枚」を指定して抜くこと(たとえば「はるす」を指定して抜く)で、50枚のセットをつくるわけである。

 たしかに札分けの際、5つの数字を指定したり、5つの数字を覚えて札分けするよりも、3つで済む分、札分けも楽そうである。
 ただ、これも慣れてきてしまえば、傾向はわかるようになってしまう可能性はある。
 そして、たとえば最近の傾向として得意札にしている人が多い「ちは」を入れようと思えば「1」とか「7」を指定すれば良いわけであるから、 恣意的にある札を入れようとすることもできうるのである。
 しかし、そんなことを考えていても仕方ないし、他の札分け方法にも同様のリスクがあるわけなので、新しい札分けの方法として、従来の方法に加えてもよいのではないかと思うのである。
 私自身は、まだ練習会でこの方法を試してはいないが、近いうちに試してみようと思っている。

 それにしても、この「数字三つ」法を考案した人の発想は素晴らしいと感じ入った次第である。


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