インドへの手紙(IX)

Hitoshi Takano   Mar/2016

Good Job !



前 略 S君、学校が忙しそうですね。この前も試験期間なので、名人戦をニコニコ動画でみることができないと書いていましたね。でも、自分でニコニコ動画をみることができるようになってよかったです。挑戦者決定戦のときの最後のあたりの英文のコメントはやはりS君だったのですね。
 私のほうでは、父の入院のことなどを書いたので、メールのやりとりなど少し遠慮しているのかもしれませんが、気にしなくても大丈夫です。時間があるときに適宜返事しますので、いろいろ質問してください。

 Youtubeなどで、アップされた動画を見て、過去の名人戦なども参考にしているようですね。こちらも 以前より様々な対戦を見たのですね。随分と目が肥えたのではないかと思います。種村名人や望月名人の試合も見ているということで、この二人が私と同会ということは、ちゃんと認識していましたね。 おかげで質問攻めにあいましたが、私の回答に予想以上に驚いたようですね。過去の私との対戦記録をはじめ、両名人との若い時からの交流を説明したところ、私と両名人の距離の近さは予想していなかったみたいでした。
 私がこまめに自分の記録をつけていることにも感心していましたが、自分の記録をつけることの大切さを認識してもらえればよいと思っています。
 その記録に関係して前の手紙でも書きましたが、名人戦・クイーン戦のスコアをかるた展望に記載されている分を全部英語表記でWEB用にアップしたのも、S君の参考になると思ったからです。私のデータ管理に驚いていましたが、驚くだけではなくしっかりと分析に役立ててください。

 話は変わりますが、1月に日本のテレビ番組で、フランスからカルタ選手を日本に招待してクイーンに会ってもらったり、近江神宮を見たり、仙台で開催された試合に出場した様子を放映した件を紹介しました。
 ずいぶんと興味をもってくれたようですが、日本のテレビ局への売り込みはご両親の反対でできなかったということでしたね。ご両親としては、心配なのでしょう。テレビ局も国によっていろいろ違いがあるでしょうから、ひょっとすると日本のテレビ局も信用されていないのかもしれません。
 テレビ局に限らず、出版社に企画を持ち込むという方法もあるかもしれません。ご両親を説得できる範囲でいろいろチャレンジしてみるのもよいかと思います。
 "Yash"というFirst Nameは、マラーティー語で「栄え」や「誉れ」という意味だそうですね。ふたつあわせて「栄誉」といったほうがいいかもしれません。親御さんの期待がうかがえます。その大事な子供を極東の島国に出すことは、心底心配なのでしょう。だからと言って、インドにとどまっていては見聞も経験もひろがりません。やはり、一度日本に来て、実践体験をしてみることが大切だと思っています。
 インドで鉄道技師になりたいという夢をもっているのですから、日本の学校で日本の鉄道技術を学ぶための留学をぜひ実現させてください。そういう理由なら、ご両親もOKしてくれるのではないでしょうか?

 さて、最後になりましたが、前回の手紙の追伸で紹介させてもらったS君の一人練習の動画についての話題でこの手紙をしめくくりましょう。

 最初に紹介してもらったものと比較し、いろいろと工夫と進歩のあとが伺えます。
 私のアドバイスを受けて改善していること、私の一人練習の動画を見て参考にしていると思われることなど素晴らしいと思います。
 膝の保護のタオルは、私以外の人も動画へのコメントで敷いたほうがよいと書いていましたが、このさっそくの実践は高く評価します。また、札が直接壁にあたらないようにクッションを置いているのは私の一人練習動画を見たからでしょうか?
 私が推測するに、S君は札が堅い壁にぶつかって角などが傷まないようにクッションを置いたのではないでしょうか? 札をプレゼントしたときに、札をいためないためどうすればいいか質問していましたから。
 私は、消耗品だから気にするなと返事しましたが、きっと札をいためない方策の答えを見出したのでしょうね。
 でも、私がクッションを置く理由は、家具の下に札がもぐりこまないためであり、日本の和室の障子や襖を跳ばしたかるたの札でいためないためです。いためない物の対象が異なるのです。
 しかし、自分で動画をみて、そこからヒントを得て実践する姿勢は素晴らしいと思います。
 それよりも、ただ音に感じて早く手を出すだけだったような取りが、「ため」を工夫したり、空振りのあとのリカバーの仕方を実践したりと、よく考えている姿勢がみえるのが大変好感がもてます。
 私の定位置は教えてありますし、実戦例の配置も示しました。私の定位置を対戦相手側にもってきて、バーチャル高野と一人練習してみてはどうかという提案は、いたく気に入ってくれたようですから、ぜひ実践して、また動画にしてみてください。
 学校のほうが相当忙しそうで、「かるた」やメールは後回しになっているようですが、今は学業を優先することは当然のことと思います。成績は100%のうち92%の取得率ということで、表彰学生として褒賞金をもらったというのは素晴らしい成果です。化学の満点もすばらしいことです。引き続き、自分の中でやることの優先順位をつけて、学業がんばってください。
 では、また。
草 々


【 参 考 】

     《 S君、1回目の投稿動画 》     Watch Indian boy play(playing) karuta part 1part2

     《 S君、2回目の投稿動画 》      Karuta#1Karuta#2Karuta#3

     《 私の一人練習 》.


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