また・後輩への手紙(V)

Hitoshi Takano   Oct/2015

助言と継承



前 略 H君、9月入学の君は、このあいだの9月で4年生に進級したんですね。進級おめでとう。そして、就活に卒業制作込みのあわただしい最終学年が始まったわけです。あと2試合取れば、H君と40試合の練習をしたことになります。40試合取ったあいては711人の対戦相手のうち6人しかいません。H君とは、40試合と言わずにもっともっとかるたを取りたいけれど、ラストイヤーの優先順位を考えると、どれだけ対戦できるかはわからないですね。卒業までに一回は、私に勝ちたいという思いは大事にしてください。私も達成されないようがんばります。

 さて、H君は今年度にはいってから、かるたのスタイルを変えました。本人曰く、自陣で守って札を取ることの楽しさに目覚めたということですね。一般論的に言うと、今までの「攻めかるた]から、「守りかるた]への転向ということになると思います。
 そこで、「守りかるた」っぽく感じる私のかるたスタイルを取り入れたいということですね。たしかに、H君の話を聞いていると、サウスポーのH君と右利きの私と、利き手は違いこそすれ、H君の目指すかるたに私のスタイルは参考になるように思います。

 最近では、慶應かるた会では、初心者に指導するとき、「自陣は覚えなくていいから、敵陣を覚えて攻めるように。」という指導をします。結構、遅くまで真に受けている新入生もいますが、どこかで自陣を取ることの重要性に気づくものです。最初の頃は、先輩相手に敵陣も自陣も取れないでいると、あっという間に敵陣が少なくなって、攻める札が少なくなって自陣の札が減らなければ、相手からは攻められ続けるという負のスパイラルに入ってしまいます。それをどうすれば止められるかと考えれば、攻めを強くするか、自陣の札も取れるようにするかしかないわけです。そこで攻守のバランスを考えることに気づけば、自陣を取ることも疎かにできないと思い至るわけです。とはいえ、「三つ子の魂百まで」ではないですが、一度「自陣は覚えなくて云々」の言霊のせいか、結構あとあとになっても「自陣」を軽くみる傾向がある 選手がいることに、私は一抹の不安を感じていました。
 ある意味、H君はこの言葉の呪縛から、4年目にしてやっと解き放たれたと言えるのではないでしょうか。

 私にはある仮説があります。それは、まったく教える人がいない中で、「かるた」というゲームに出会ったら、一般的には人は自然に「守りかるた」になるというものです。
 いわゆる「お座敷かるた」経験者は、競技かるたに移行すると、自陣の守りから札を取ることに慣れ、そして、その後に敵陣を攻めることの大事さに気づき、「攻め」の強化を始めるケースが多いのではないでしょうか。守りがるたの選手が自陣の札を取って自陣を減らしていくと、リードしているにも関わらず、守るべき自陣の札が減っていくのです。この間に相手が相手の自陣(こちらから見て敵陣)の札を取って減らしていくと、せっかくのリードはもちこたえられなくなり、追いつかれたり、逆転されてしまうことにもなります。そこで、「守り」で自陣を減らすことから入った選手も、敵陣を「攻め」て取ることの重要さに気づき、敵陣への攻めを速くするべく「攻め」の強化練習をはかることになるのです。
 私などは、典型的なこのタイプでした。もちろん、先輩に「守るな!攻めろ!」と叱られつつ、叱られるのが嫌で攻めるという側面もありましたが、、、。
 私の仮説が正しいとしたら、初心者は放っておいても「守り」に親和性を持つのですから、あえて「攻め」を強調して教えるというのが、昨今の「攻め」重視教育の考え方の根底にあるのでしょう。でも、その効果が出すぎてしまうというところから、「守り」の軽視につながってしまっているのだとすれば、どうでしょうか。本人が金科玉条のように「攻め」一辺倒理論の呪縛にとらえられているところから、その呪縛を緩めてあげるために多様な視点を提示するような指導を行うことこそが、最初から「攻め」を強調する指導をした先輩たちの役割であるように思います。
 まあ、自分で気づいて攻守のバランスを自分でよく考えられるようになるのが最もよいのですが、、、。

 私の書いた「歌留多攷格」では、一般論としての「守りかるた」ということを説明しています。実は、ここで説明したような「守りかるた」は、「感じ」の早い選手でないと向かないだろうというのが、私の考えです。当然、私のように「感じ」の遅い選手は、同書に記したような「守りかるた」はできません。あくまで、「攻めかるた」の枠組みの中での「守りかるた」なのです。(参照:一般論としての「攻めかるた」
 ただ、誤解がないように書きますが、私は決して「守りかるた」を目指しているわけではありません。「攻めかるた」の枠組の中で、「攻めかるた」を目指してはいるが、「感じ」の遅さ等の自分の選手として持つ能力の諸要素を考えた場合、他の人のような「攻めかるた」はできないので、自分の個性を活かしたスタイルを確立していったら、それが他人の目からは「守りかるた」っぽく見えてしまうということにすぎないのです。
 一例をあげましょう。「感じ」が遅いため、どうしても攻めにいくときに出遅れてしまう。そうすると攻めに出る前もしくは攻めに出始めた直後に「決まり字」の音が耳に入ってしまう。それが自陣の札であれば、そこから攻めに出るのはナンセンスなので、聞こえたものは自陣だったら取りにいくしかないので自陣を取る。それが、友札の別れ札を自陣で守ったという結果として見えてしまう。そういうことなのです。
 このように、私のかるたスタイルは、感じの遅さと自分の身体の左方向への払いの遅さを補う形で確立していったものなのです。まあ、それを「守りかるた」と言うのであれば、別に否定はしませんが、、、。
 私だって、「攻め」を速くするための払いの練習を行い、「感じ」を少しでも早くするために様々な練習の工夫をしました。「感じ」はあまり早くなったとは思っていませんが、一音目に感じて手を出す練習や、払いの速さでなく感じの速度で札に向かう練習などを試みました。これらの練習の効果の是非は微妙なところではありますが、こうした練習を積み重ねたという 基礎の上に今の私のかるたスタイルがあるのです。
 H君が、私のかるたスタイルを参考にするのであれば、この前提を理解したうえで参考にしてください。

 では、少し、実践的な話をしましょう。

 私のかるたの特徴のひとつに定位置があると思います。
 定位置は、選手にとって重要な個性の表出です。決して疎かにしてはいけません。
 対戦相手が私の定位置を見てまず感じるのは、「上段が多く、一枚ずつ札を離して、上段中央部にも札が並ぶ」ということでしょう。それと、友札が二枚自陣にあっても、二枚を並べずに別けて置いているということではないでしょうか。
 上段には、一字決まりから六字決まりすべてが並ぶ可能性のある定位置となっており、決して、一時避難的「浮き札」ではありません。地に足をつけた定位置です。
 この上段の効果は、様々な決まり字でタイミングの取り方に多様性を持たせるということです。自陣の定位置として慣れている自分にとっては苦にならなくても、慣れていない相手にはタイミングをはずすというリスクを背負わせるということです。相手が早く感じたとしてもタイミングが取れずに手が浮いたりでもしたら、こちらは遅く感じたとしても、取りの技術で拾うことができるということです。いわゆる「後の先」となる取りです。
 この「拾う」ということが、私のかるたスタイルの重要なポイントです。
 H君も、このスタイルを目指すのであれば、自陣上段の取りの技術はしっかり磨かなければなりません。特に「突き手」は大事です。札際(自分から見て札の底辺)まで、まっすぐに低く行って指先を伸ばすのがコツです。そして上段の「払い手」です。基本は札直ですが、右方向への指先の使い方、左方向への手首の返しは、札直がずれた場合の必須技術です。上段の払い手は、敵陣をひっかけないためにも、常に札の下半分の範囲を目標に行います。
 上段の中央で、「引き手」を使うこともあります。これは、相手陣に上段札がない場所で行うことが無難です。指先をうまく使って手前にはじく感覚です。そして上段の「押え手」です。基本的には、余程のことがなければ上段の「押え手」は使いません。なぜならば、押えるための高さが1テンポの遅さを生むからです。押える時でも低く、そして、札の下半分を押えるということが大切です。したがって、上段の押えは指先での押えです。手のひらを使ってはいけません。手のひらがつくのは、札ではなく札の手前の畳ということになります。もちろん、敵陣の札を触らないためです。
 私の上段には「囲い手」も登場しますが、私は「囲い手」がうまくありません。正直、下手です。できずに相手に囲われたときには、決まり字を聞いて「突き」やら「払い」やらを試みます。相手も上段の囲いに慣れておらず、取るタイミングがずれることがあるので、先に囲われたとしてもあきらめずに試みる価値があります。
 まずは、上段に札を置くだけではなく、自陣上段の取りの技術について工夫しながら、自分のものにしてください。質問してくれれば、いつでも詳しく教えます。

 上段に定位置が多い効用としては、相手の攻撃目標の分散ということもあります。
 左と右という大きな括り方での2方向の「攻め」に対して、もう一つ上段中央という攻めの括りを相手に意識させるということになります。この相手の攻撃ポイントの分散で、相手の「攻め」が緩んでくれれば、その分、自陣の攻撃目標になっている札を拾える可能性が増えるということになります。
 相手の速くて鋭い攻撃を受けたら、仕方がないので、他の箇所で拾うことを考えるのが、私のスタイルです。
 そして、自陣内での札の移動は最小限にとどめます。右下段の札や左下段の札が一枚もないということになったら、最低限1枚を下段の空いたところに移動させるくらいです。1字に決まったからと言って、下段に下げて相手の攻めのターゲットにするようなことはしません。一字に決まった札も、可能な限り定位置に置いたままにして、相手の狙いを分散させます。
 自分の取りやすさよりも、相手の取りにくさを考えるということが、拾うために大事な発想です。H君は、1字決まりを下段に下げるタイプなので、ぜひ考えてみてほしい観点です。
 上段の効用としては、自陣の上段は目に入りやすいということがあります。札が視野に入るのです。この意味するところは、札が見えているということは、「暗記」と「感じ」に対しての補助(補強)効果があるということです。「感じ」の遅い人でも、目に入った札に対しては「感じ」が早くなることがあります。「暗記」についても、目に触れることで意図的に暗記 しようと意識しなくても、自然と暗記に入っているという効果があります。ただし、その札を敵陣に送ったら、そのことを意識して暗記を入れなおさないと、それこそ自然に元の自陣の定位置に手が出ていることがあるので要注意です。
 この上段の札を視野にいれるという観点から、H君の現在のフォームを評価すると低すぎます。H君のフォームにも変遷がありますが、以前は高すぎたし、今は低すぎです。どうやら、低いほうが自陣が取りやすいのでそうしている感じがしますが、札を視野に入れるという観点から言えば、もう少し、顔をあげ、自陣上段を視野に入れつつ、敵陣が自然に視野に入るくらいの顔の位置まであげるべきです。
 H君は、構えの顔の位置から、札に反応したときというのべきか札を取りにいくときというべきか悩みますが、この時に顔を一旦あげます。この動きが無駄といえば無駄です。H君は自陣の右中段と右下段の取りは、まあまあよい取りをするのですが、ここの取りの時は、顔を一旦あげずに取りにいっているので、よい取りになっているのです。しかし、自陣右中段・右下段以外のときは、一旦顔をあげる動作が入ってしまうため出遅れます。顔は、あげる動作よりさげる動作のほうが取りと連動させやすいことを考えると、構えの時の顔の位置は札を取る動作のためにあげる位置に最初からあったほうがよいという結論になります。この構えを工夫し、実践してみてください。
 構えの話から視野の話に戻りますが、視覚はH君の「感じ」と「暗記」を補ってくれます。このふたつの甘いH君としては、視覚を味方につけないという選択はないのではないでしょうか。ただし、これには、注意事項もあります。見ることを意識しすぎると見ているところしか取れないということになりかねません。あくまでも「自然に」視野に入れておくという点が大事です。

 「見ること」、「視野に入れる」ことの大事な点は、相手ないし自分が札に対して取りにいったときの「手」と「札」を見ることにおいても同様に大事です。これにより、「お手つき」の有無もわかりますし、札をどちらがどのように取ったかもわかるからです。そして、この行為の大事さは、何よりも「拾う」という取りに活かされます。相手の払い残しを取ることにおいても大事ですし、自分の払い残しをフォローすることにおいても大事です。
 私のかるたスタイルの中のキーワードの一つである「拾う」という取りにおいて、大事なのは「見る」ことであると認識してください。

 上段の話の中にH君の自陣の右中段と右下段の話も出てきましたので、次に自陣の左中段と左下段の話をしましょう。
 左利きの左の中・下段は、ある意味稼ぎどころです。特に自陣の守りで札を減らしたいと考えているH君にとっては、活用しなければならないところです。しかし、はっきり言って、サウスポーのわりに自陣左の取りが下手です。
 特に序盤において左に置く札が多いとき(一段に7〜8枚)、札を取る動作の際、一旦、手があがってから自陣の左の札を取っています。一段が長いため、内側の札をひっかけないことを意識するあまり、自陣の動作でもこれがでてしまうのだと思います。これはロスです。この癖が、自陣左の一段の札数が減っても出てしまって、損をしています。長いのが気になるのであれば、6枚を越えては札を置かないと決めてしまってはどうでしょうか?
 札をあまり動かさないほうがいいという持論の私ですが、このように決めたら、定位置の優先順位で7枚目以降の札は、上段中央や右中段に緊急非難させておき、一枚減ったら本来の定位置に戻すというような工夫をすればよいように思います。そうしないと、サウスポーの自陣左のメリットが活かせません。
 一段6枚であるならば、内側の札のミスタッチを懼れることなく思い切り低い手の出し方で札押しで払えるはずです。
 H君の今の技量で自陣の札直の払いは求めません。H君は札から直接を意識すると、せっかく早く札押しで払える自陣左の札を一旦手をあげて押さえにいってしまうからです。H君の自陣左中・下段の「押え手」は禁止事項です。この二段はとにかく低く早く一番内側から札押しで全部払い切るという意識で実践してください。
 今のH君に多くは望みません。
 これだけで良いのです。

 さて、次はいよいよH君の敵陣の取りについてです。
 すでに述べた構えのこと(最初の顔の位置)と手の出し方(一度手を浮かす癖)の二点を修正し、無駄な動きをなくせば、入学後3年間とらわれ続けていた「自陣はいいから敵陣を攻めろ」の言葉に従った「敵陣への攻め」を実践すればよいです。特に相手の右中・下段は、H君が今も魅せるサウスポー特有の出札へのまっすぐなアプローチで充分です。たまに出る手を高く上げてからの「押え手」は禁物です。

 相手陣の左(H君から見て右)の取りは、H君は上手ではありません。一旦、手の位置を高くあげてからの取りになっているからです。自陣の右下段の取りや右中段の取りがうまくいった時のイメージをそのまま、相手の左上段、相手の左中段、相手の左下段とすこしずつ延長させていくときっとよい攻めができると思います。手の出す角度と体の使い方を少しずつ変えていけばいいのです。今のH君に相手陣右の札直は期待しません(相手陣左の札直は期待していますが)。一番内側までの札はまっすぐにアプローチし、札に触れた瞬間に外側に払い出すイメージです。インパクトの瞬間に手首のスナップを利かせることができれば、なお良いです。

 相手の上段を取るときは、自陣の上段をひっかけないことだけを意識して下さい。現在、H君の対戦相手で上段中央にたくさんの札を置くのは私だけです。だから、中央の取りへの注意は置いておき、相手陣上段左右の取りは、手首の角度を工夫して指先で払うイメージで実践してください。
 私と取るときは、お手つきをするくらいなら、私の上段中央の札は無理に取る必要はありません。他所で取ればいいのです。もし、お手つきしないように取りたいというのであれば、H君に伝えるべきことは一つだけです。相手の上段の札の下半分の位置を払うようにするということです。今のH君の技術であれば、自陣の上段中央に札を置いて、さらに私の上段中央の札を取ろうとするのは、お手つきのリスクを限りなく高めるだけです。やめたほうがいいと思います。過去には「押え手」で私の上段を取ったこともあったかと思いますが、それは、H君が自陣の上段中央に札を置いてない時代の話です。今のH君の上段配置であれば、お手つき必至の「押え手」でした。私の陣の札を取りたいならば、左下段と右中段・下段の札を取りに来たほうがお手つきのリスクは減り、札を取ることができる可能性が高いでしょう。

 ここまでは、取りを中心に見てきましたが、極めて各論でした。もう少し、大きくH君のかるたを捉えてみましょう。

 H君は、「自陣を中心に守りつつ、敵陣の別れ札を攻める」と言ってますが、全般的にいえばできていません。
 敵陣が減って自陣が増えてくるとこの考え方にやや近い形で札が取れるようになってくるのですが、それでは「時すでに遅し」です。これは、相手がそちらにたくさん札を送った結果、攻めの暗記に「漏れ」や「抜け」、「勘違い」という現象が起きていて、大差に乗じてのそちらの陣への「攻め」を意識しているために、自陣がやや疎かになっているという事態にH君が救われているにすぎません。
 上記のようなスタイルを表明するのであれば、序盤からこれができなければいけません。
 正直、H君は序盤の暗記が弱い!
 そのために、H君と取る時は、私は序盤で差を広げることを心がけています。そうすれば、あとは安全運転で勝利を目指せます。たまに、序盤にH君の取りがツボにはまることがあるときも、中盤の入り口では差を広げられるようにチャンスをうかがって、H君のお手つきなどをきっかけにしてラッシュをかけます。これが成功すれば、あとは安全運転で大丈夫です。
 H君が私から勝利を奪いたいならば、最低でも中盤出口あたりまで僅差でついてこなければならないと思います。私に安全運転で楽をさせてはいけません。
 H君の序盤の暗記が弱いことのひとつに、自陣を並べるのが遅いというのがあります。考えながら並べてはダメです。ゆっくり時間をかけて考えながら並べているからしっかり暗記が入っているかというと、H君の場合はそうではないのです。単に迷っているだけで、迷っている元の位置に手を出してしまうようなことになっているのです。定位置があるのですから、その法則に則って、素早く並べて並べ終わったら、自陣の80%は暗記が入っている状態にしてください。そして、もう一まわり自陣を見たら、自陣は100%憶えていてください。そのあと敵陣をひととおり見て、印象に残っている札を頭の中に焼き付けます。そうしたら、席を立ち、札が並んでいる場を見ずに、自陣をすべて思い返し、敵陣の印象に残っている札を思い浮かべます。席に戻って、今度は札を見ながら、音ごとに敵陣と自陣を関連づけて暗記を入れてください。
 15分の暗記時間は、集中力を高めて有効に使ってください。「視覚」を「暗記」の補助に使うことも忘れずに実践しましょう。
 残り2分前には攻めるべき札、守る札、拾いたい札などが見えてくると思います。
 2分前になったら素振りは、構えの位置と札への距離の確認程度にしておきます。H君は畳を叩きすぎです。距離の確認の素振りが終わったら、攻めるべき札の最終チェックです。自陣の札は暗記が入っていることが前提です。
 H君の実戦では、「お手つき」が多いのが問題です。あまりに意味がわからないお手つきは減ってきていますが、なかなかおさまらない「もとの位置を払ったり」・「上段をひっかけたり」などのお手つきは要注意です。
 敵陣・自陣間を動いた札は、繰り返しよく暗記することと、直前に読まれた札の同一音関係は決まり字の変化とともによく暗記することを励行してください。

 私のかるたスタイルを継承するくらいの気持ちでいるならば、せめて上記に述べたことくらいはできるようにしてください。私も、私の上段芸の継承者が増えることは歓迎です。
 将来は、H君と上段中央の札の取り合いをして、もっと上段の取りの技術の向上を目指したいというのが、私の希望です。
 今回の手紙は、そのための助言でもあるのです。

 では、また、練習場でお会いしましょう。
草 々


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