まだまだ・後輩への手紙(V)

Hitoshi Takano   Jan/2021

コロナ禍の中での練習



前 略 KH君、新しい年を迎えました。本年もよろしくお願いします。
 昨年は、コロナ禍の影響で、3月以降の練習は散々でしたね。 3月に1回だけ練習したものの、4月から8月はまったく練習できませんでした。 3月までの10試合のうち7試合、9月からの10試合のうち6試合がKH君との練習でした。
 練習量は激減しましたが、コロナ禍の中で、20試合練習し、そのうちKH君と13試合(6割5分)練習できたのですからよしとしましょう。 練習相手をつとめていただいたことに感謝しています。
 2019年にD級で入賞したことで、2020年の級と段位の対応の変更にともなって、6月にはKH君のもとに初段の免状が来たことは、私にとっても大変うれしいことでした。

 おめでとうございます!

 私がKH君の練習の相手をするときの目標の一つが、KH君に初段をとってもらうことにあったのですから、当然と言えば当然の喜びです。
 コロナ禍で練習に制限がかけられ、9月以降はふたりだけで、1組1試合の練習を重ねてきていますが、それだけに内容が濃い練習になっているようにも感じています。 次なる目標は、KH君のC級昇級と二段獲得です。焦ることはありませんが、じっくり力を蓄えて、近い将来に目標を達成しましょう。
 昨年最後の練習の後で「手の内がわかってる相手なので、それならではの攻め方や札の送りになっちゃうよね。 そもそも型にハマってないかるたなので、かるたのセオリーとかそういうのがわかんない」とツイートしていましたね。 その手の内がわかっている相手の私に勝つためには何をすればいいのかを工夫することが大事です。 手の内がわかっているなら、どういう送りをすれば、私が嫌がるか、攻守のバランスをどうすれば私が取りにくくなるのか、考える材料はいっぱいあるはずです。 その工夫をしないで、手の内わかってるから「この札を送ったら、あそこに置くよね」とか思いつつ漫然と送ってはだめです。 私が取りにくく(守りにくく)KH君が取りやすい(攻めやすい)場所や札もわかっているのですから、大いにその知識を活用すべきです。 同じ相手と取るからこそ、様々な工夫や作戦立案ができるというメリットもあるのです。そこを考えて練習に臨んでください。
 手の内がわかっている相手だからこそ、漫然といつもどおりの練習ではだめです。 今回は、攻め強めでいこうとか、今度は守り強めでいこうとか、いろいろ試してみましょう。 敵陣を取るなり、相手にお手つきしてもらわないと札は送れないことを認識したうえで、序盤からの友札を相手にくっつける送りは封印とか、単独の3字以上の札を送るのは封印とか、 いつもやっているちょっと人と違う送りをやめてみるというのも手です。特に試合出場前であれば、D級で出場する選手の平均的イメージをもとに自分の練習を組み立てましょう。 それは、私が相手でもできるはずです。友札を送られてきたら、D級では2枚並べる選手の確率が高いと思いますが、私は絶対に並べません。 それを知って渡り手の練習をしたいというのであれば結構ですが、大会前に対D級選手を相手にすることを考えれば、2枚並べない私にその送りをしても、 攻めにいく練習にはならないことは自明でしょう。むしろ、わかれ札をお手つきせずに取る練習と位置付けたほうが合理的ではないでしょうか。 それ以外にも、考えられる送りや攻守のパターンはいっぱいあります。一試合ごとの練習テーマとして考えてみましょう。
 「お手つきを3回以内におさえる」というテーマはわかりやすいですが、もっと細かいテーマ設定をしないから「それならではの云々」となってしまうわけです。
 試合前の練習であれば、多少のリクエストには応えます。たとえば、対KH用の送りではなく「初顔合わせ」の選手想定で札を送ってくださいということであれば、そうします。
 少し考えてみてください。
 そして、後半の「かるたのセオリー」についてです。いわゆるセオリーと言われている相手がやってくる「攻めかるた」の考え方は、知っているはずです。 私のWEB-SITEでも読んでいるでしょうし、慶應の先輩・後輩との練習で経験済みのはずです。そういう意味では、相手が使う「セオリー」はわかっているはずです。 そして、それを自分自身がそのセオリーが不向きであることが明確になったがゆえに、「型にハマってないかるた」を選択し、独自路線を磨いてきたわけです。 ここで言っている「わからない」は、自分が一般的と言われているセオリーの使い方がわからないという意味のように思います。
 昇級・昇段をもう一つ進めるのであれば、ブレイクスルーが必要です。そのためには、今のKH君のかるたスタイルをベースとしつつも、アレンジを加える部分が必要になります。 そのアレンジが、一般的に言われている「セオリー」であり、「攻め」です。そこには、いわゆる「サウスポーのメリット」も加えるとよいでしょう。
 今年のチャレンジは「かるたの幅を広げる」ということがよさそうです。
 KH君の「かるたの幅を広げる」練習に力を貸しますよ。手の内がわかっている相手だからこそ、今までと異なる観点での「幅を広げる」練習がみえてくるものと思っています。
 では、今年もお互い、良い練習をし、良い結果をだすことができるよう、そして新型コロナウイルス感染症にかかることがないように、日々歩んでいきましょう。
 また、練習場でお目にかかりましょう。
草 々


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