TOPIC "番外編"
楠木早紀永世クィーン不出場
〜クィーン戦10連覇でSTOP〜
Hitoshi Takano OCT/2014
2014年9月末、一般社団法人全日本かるた協会の
ホームページに次の一文が掲載された。
「楠木クイーンのクイーン戦出場辞退について」
楠木早紀クイーンから来年1月のクイーン戦を辞退するとの申し出があり、常務会で9月29日に承認されましたのでお伝えいたします。
同協会の機関誌である「かるた展望」
第59号に「楠木クィーン、20連勝10連覇を達成」という記事のあとの本人手記に「学生クイーンの終了とクイーン戦10連覇20連勝という節目を機に…」とあったので、気にはなっていたが、ついにその時が来たのである。14連覇の西郷名人が2013年の名人戦に不出場した2年後に連覇の時期が8期重なる楠木クィーンも同様の選択をしたのだ。
西郷名人の不出場の発表は予選の当日であり、この発表のタイミングに対して賛否両論があったことからも、今回はこの時期の発表になったのだろう。
現名人の不出場や現クィーンの不出場については、
TOPIC番外編の第14回でも紹介しているので重複は避ける。クィーン戦では4人目となる。
もちろん、「勇退」という言葉が適切なのであろう。
「10期」・「20連勝」はわかりやすい数字である。個人的には、渡辺永世クイーンの11連覇や、西郷永世名人の14連覇超えを見てみたかったが、かなわぬ想いとなってしまった。しかしながら、クィーン位を返上して、名人戦の予選にチャレンジするというのであれば、大喝采するのであるが…。
名人戦挑戦の夢はさておき、今回の出場辞退については、中学3年時にクィーンとなり、高校3年間、大学4年間、大学院2年間の10年ということで、自らを「学生クィーン」と表現した永世クィーンの決断だったのだろう。
競技者によっては、自分こそが楠木クィーンに勝利してその座を奪うことを目標として練習に励んできたという思いをもつ選手もいるだろう。出場辞退は「肩透かし」をくった思いで、切歯扼腕しているかもしれない。
しかし、クィーンというタイトル保持者だからこそ、選べる選択をしたのである。それをタイトル保持者でない人物が何を言おうが、仕方のないことなのではないだろうか。
ただ、私はタイトル保持のままの出場辞退の話を聞くと思い出す話がある。Wikipediaからの引用となるが、ご容赦いただきたい。
ボクシングの世界王者であった輪島功一氏の逸話である。
知人に「チャンピオンのまま引退するのが美しい去り際ではないか」と言われた輪島は、笑いながらこう答えたという。「俺は辞めないよ。チャンピオンのまま引退すれば、確かに傍目には格好良く映るかもしれない。でも、本当はちっとも格好良くないんだよ。どうして引退する必要があるんだ?次の相手には勝てないかもしれないと考える、負けることを恐れる臆病な心からじゃないか。見た目や格好を気にすると人は臆病になる。体が決定的に壊れてもいない、まだ戦えるのに辞めるのは卑怯だと思う。だったらたとえ負けても闘うべきじゃないか」
競技者の美学は、競技の種類によっても異なるだろうし、人それぞれであり、様々な考えがあって然るべきである。スポーツ選手でも高いハードルを己に課して、それに達せなくなったから引退するという余韻のある去り方をする選手がいる一方、過去の栄光は関係なくボロボロになるまで現役に固執する選手もいる。
どちらの考えも素晴らしいと思うのではあるが、何故か輪島功一氏の発言は、私の心を捕らえて離さないのである。ボクシングという相手を殴って、自身が殴られるという競技の過酷さのゆえなのだろうか?
タイトル保持者でもなんでもない一競技者の私であるが、私はこれからどういう選択をするのであろうか?
どんな選択をするにしても、後悔だけはしないようにしたいものである。
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