TOPIC "番外編"
"Breakthrough"考(2) -休息-
Hitoshi Takano Feb/2015
テーマ:休みの効用
「あいつは、練習で強いのに何故か本番で弱いんだよな〜!(ため息)」という選手がいる。原因のひとつはメンタル面にあることがある。いわゆる「のみの心臓」とか「あがり症」とかが、これに該当するだろう。
このメンタル面の問題については、以前にもTOPICで取り上げている。
“「制御」の技術”というタイトルで書いたので参照してほしい。
もう一つの原因は、実に肉体面にある。
このケースのため息は「あいつは、練習熱心でこれだけ練習していて、練習では粘り強いし、よく逆転勝ちもするし、勝負強いのに、何故か本番では昇級戦の直前で負けちゃうんだよな〜!」という感じになる。
年齢を重ねると肉体的な衰えがでてくるので実体験として認識できるのだが、実は「競技かるたは、身体に悪い!」のである。「身体に悪い」というと語弊があるので、言いなおすとすれば「身体の普段使わない部分にかける負荷が非常に大きい」のである。若いうちは、ほぼ毎日練習してると身体が慣れてしまって、そんなことは感じないが、年をとると衰えてきている身体の痛みの出てきている部分への負荷や、普段気付かない身体の箇所への負荷がいかに大きいかを実感する。競技かるたを取ったあと、「若い時によくこんなきつい競技を平気で毎日やっていたなぁ〜」と感心するのである。
もう読者のみなさんはお気づきだろう。若くて元気でも、練習をしすぎると肉体には疲労が蓄積しているのである。マラソン選手などが、練習のしすぎで疲労骨折になったというような話をよく聞くのではないだろうか。練習していないと弱くなってしまうのではないかという不安が生じたりするならば、それは、少しメンタル面の対策も考えたほうがいいかもしれないが、肉体面の対策はある意味簡単だ。
私が、練習に熱心すぎる後輩の"Breakthrough"を願って言う言葉は、、、
「試合の当日まで、1週間、1週間が無理なら3〜4日、練習を休んだほうがいいよ。そうしたら、試合当日に新鮮な気持ちとリフレッシュした身体でかるたが取れるから。」
である。
筋肉痛は筋繊維の破壊と再生のプロセスだが、だいたい2日で修復され強化される。しかし、負担がかかっているのは筋肉だけではない。膝や足首といった関節にも大きな負荷がかかっているのである。首や腰もそうとうな負担をになっているはずである。このことを認識して意図的に休むのがもっともよいのである。(参照:「削られる肉体」)
練習熱心なのは、もちろん悪いことではなく、むしろ良いことであるが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、練習しすぎて体調をくずしては元も子もないのである。さきにため息であげた「粘り強い」「逆転勝ち」
「勝負強い」という文言は、裏をかえせば、みんな身体と精神に負荷をかける要因そのものである。
肉体のみでなく、精神もゆったりと休ませてほしい。ゆめゆめ「練習しないと勝負勘がにぶる」とか、
「練習しないと音への感覚が狂う」とか「ライバルのあいつは練習しているのに…」と考えないことである。
「休むことも練習のうちだよ!」
練習熱心なワーカホリックな選手への決め台詞である。こういう練習好き選手は「休息」=「非練習」=「悪」と考えがちなので、「休息」=「練習」=「善」という発想の転換の図式を示してあげることが大事なのである。
日頃の練習の積み重ね、そして、試合当日までの休息をふまえたコンディションづくり、これが、きっと
"Breakthrough"につながるのである。
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