TOPIC "番外編"
団体戦の夏
〜2016の夏を振り返る〜
Hitoshi Takano SEP/2016
今年も、また、かるたの夏が来て、暑さの中に時が過ぎていった。
かるたの夏は、また、団体戦の夏でもある。
団体戦の夏は、7月下旬の近江神宮の高校選手権に始まる。そして、高等学校総合文化祭や、中学生大会の団体戦は、都道府県
チームでの戦いとなる。8月の前半には近江神宮で大学選手権があり、8月の最後を飾る団体戦が、職域学生大会D級と同時開催
のプレミアムトーナメント戦である。
個人戦も前後に開催されるケースもあるが、やはり見ている側からも参加の当事者の側からも、夏の「華」は「団体戦」である。
それも、都道府県単位の学校をこえたいわゆる県代表チームの戦いよりも、学校や職場の単位でのチームの戦いのほうが、応援する
人、出場する人の思い入れが強く、おおいに盛り上がる。盛り上がるがゆえに、結果については悲喜こもごもであり、最終的に
優勝できるチームの数は限られているので、「喜」よりも「悲」の数のほうが上回ってしまう。
さて、今年は、映画「ちはやふる」の上映もあり、例年よりも夏の高校選手権の注目度は高かったのではないだろうか。
BS-JAPANの「運命の日」などでも取り上げられ、この業界で永年、普及について考えてきた人間としては、たいへん嬉しい限りである。
そして、下馬評のとおり、東京都の暁星高校が9連覇と通算11回目の優勝を遂げた。来年には、静岡県立富士高校が記録した
10連覇と通算12回の優勝に並ぶという偉業にチャレンジすることになる。
高校のチームは、基本的に長くても3年でチームのメンバーが入れ変わる。実際には毎年メンバーが変わると言ったほうがよい
だろう。その中での連覇というのはたいへんなことなのだ。個人のプレイヤーの力は大事だが、チームとして強さを伝承していく
仕組みがなければ、連覇は難しい。連覇を重ねれば重ねるほど、先輩たちからのプレッシャーも大きくなる。先輩たちは何も言わなくても、
現役は、自分たちの代で途切れさせてはいけないと自らにプレッシャーをかけてしまうものだ。新チームは、まず、このハードルを
超えて、連覇にチャレンジしなければならないのだ。
伝統校とはいえ、新入生が豊富に入ってくるとは限らない。暁星の場合は中高一貫で、中学の経験者がある程度見込めるとはいえ、
何らかの原因で高校から別に部活に移ってしまうということがないとはいえない。次世代につなげるには、部員の確保と強い後輩を育てること
しかないのである。強い後輩を育てることは自分たちを強くすることにもつながる。先輩と後輩の実力差が開きすぎているチームは、
偉大な先輩たちとの強さのギャップに後輩たちが悩むことになる。後輩たちを悩まさないためにも、後輩の力をできるだけ自分たちに
近づけてやらねばならないのである。
自分たちのチーム内部の課題とともに、連覇にとって大きな課題はライバル校の存在である。切磋琢磨する存在であるとともに
連覇のストッパーたらんと虎視眈々と王座を奪おうと狙っている恐ろしい存在でもある。
来年度、どのようなドラマが待っているのか、今から楽しみである。
大学選手権は、高校選手権が5人のチーム戦であるのに対し、3人のチーム戦とコンパクトな団体戦である。当初は出場大学数を
増加させる意図があったので、メンバーの少ないチームでも出場できるようにとの意図があったのだろうが、これだけ規模が拡大
したのだから、5人団体に移行してもよいかもしれない。3人団体のクラスと5人団体のクラスと二つの方式を設けてもよいかも
しれない。
運営方法はともかくとして、大学選手権は、東京大学が優勝し、慶應義塾大学が17年ぶりの準優勝という結果になった。
慶應は、大学選手権の団体戦では未だに優勝がない。しかし、慶應のチームとしては自己タイ記録なのだから、素直にその結果を
喜ぼう。
大学選手権の3人制は、たとえば、高校時代に活躍していた3人のA級選手が入学してくると4年間同一メンバーで
チームを組むことも可能だ。それが悪いとはいわないが、さすがに5人となるとメンバーの新陳代謝があり、チームを後輩の世代へ
どう引継いだのかなどを見ることができるので、観戦者としての興趣は増す。とは書いてみたものの、慶應も3人団体だから
出場できたという時代を経験しているので、3人団体は3人団体として大学選手権の味わいとして楽しむとしよう。
来夏も慶應チームの活躍を期待したい。
職域学生大会のD級は、運営方法に変更があった。春のC級の3つのリーグへの昇級チーム6チームを決める方式を12チームの
トーナメント戦6山に改め、従来の54チームから72チームの出場を可能にしたことである。従来のランダム対戦の予選2試合は
廃止し、最初からチーム5人が並んで対抗する形となった。前回のC級からの陥落チームと前回のD級での成績優秀チームの
24チームがシードとなり、2回戦からの出場となる。
私の所属する慶應義塾教職員チームも出場したので、この様子は
別途記録してあるので、興味のある方はリンク先をご覧いただきたい。
72チームを上回るエントリーがあったことは驚きであるし、次回もエントリーが多いと今回の成績は出場の可否に大きく
影響することになる
1回戦で勝てば、慶應義塾湘南藤沢中高との対戦という夢の慶應バトルだったが、2勝3敗と負けてしまい実現できなかったのは
残念である。したがって、2回戦は取れず、3回戦は順位決定戦で、ここでも2勝3敗と、結局は勝ち点はゼロであった。
それでも、勝ち点ゼロのチームの中では2番目の成績であった。4勝で全勝2名(主将と三将)だったが、上位のチームは主将と
副将が全勝だったので、ここで差が出てしまった。72チーム中62位は、次回の出場の当落線上ぎりぎりのところと予測しているが
はたしてどうだろうか?
暑かろうがなんだろうが、われわれも来年の夏を団体戦で熱く戦いたいものである。
最後に、特に高校のチーム向けに一言書いておきたい。
試合が終わり、チームで反省のミーティングをするだろう。特に負けたチームでよく見かける風景は、「自分が負けたのが悪い。
3敗目を喫してしまったのは自分の責任だ。」という声である。特に2勝2敗で、チームメイトが応援する中、逆転の運命戦など
で負けるとショックは大きい。チームのメンバーへの申し訳なさや、自分への怒りなどやるせない気持ちから、このように
言いたくなるのはわかるが、実は翌年のチームへの反省としては、こういう個人的なコメントは本筋ではない。
だいたい、こういう団体戦の負けを個人の負けの責任にしてしまうと、これが当事者の心の中に澱のように溜まっていき、
卒業後続ける気持ちを萎えさせてしまうことがあるからだ。
チームの反省は、当日の当該試合の反省に持っていくのではなく、そこにいたる練習計画からメンバーの意識合わせや
作戦といったものに持っていくべきである。団体戦の負けは、個人のせいではなく、そこにいたるこうした背景の中にこそ
あると考えたほうがよい。それこそが、翌年にチームとして残る財産となるのだから。
最後に再び書いておこう。
来年も暑い夏を団体戦で熱く闘おう!
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