後輩への手紙(8)

Hitoshi Takano JUN/2002

丙君への手紙(3)

前略 丙君、就職して2ヶ月、職場研修はどうでしたか。本配属が決まったそうですね。
 ますますのご活躍を期待しております。

 仕事も忙しくなるでしょうが、ぜひ時間をつくってかるたの練習にも顔を出してください。 多少、都心からは離れているようですが、職場のそばの競技者や地元のかるた会のみなさんにお 世話になることも大切なことでしょう。仕事が忙しくなると、練習への足も遠のきがちになりま すが、それを防ぐには何か自分なりに目標を持つことが肝要です。

 まず、丙君の大きな目標はA級にあがることでしょう。それには地方の試合にも豆に出場する ことです。仕事の疲れを休日に癒したいと思うかもしれないけれども、若いうちは無理もきくも のです。金曜日の最終の新幹線で京都にいって土曜日に観光して日曜のかるたの試合に出て、夜 行バスで月曜の朝東京についてそのまま出勤なんてことができるのも今のうちです。逆に今しか できないことです。今しかできないことは、今のうちにやっておきましょう。これをやると1試 合の1枚の取り札の単価があがります。それは半分冗談ですが、札一枚を大事に取るようになり ます。この一枚を大切さを実感することは、きっと、競技を続けていく上での財産になることで しょう。

 もう一つの目標は、もっと身近なところにあります。それは、職場での競技かるたNo.1の座を Getし、Keepすることです。今、丙君の職場には3人のかるた会の先輩がいます。しかし、一人は 現役時代から、どちらかというと詠み手だった人ですし、昔日の学生選手権のA級優勝者も十数年 かるたを取っていません。丙君がTOPに君臨するのを妨げるのは、ただ一人です。でも大丈夫です。 相手は四十を越えて、練習も年50試合も取れないようですし、なにやら増加する体重の影響で 身体のあちこちにガタがきているようではありませんか。基礎的な運動能力の点では、丙君がはる かに凌駕しています。「負ける訳がない。」というくらいの気持ちで、余裕をもって相手を呑んで かかりましょう。相手が三味線を弾いてきたりしても、せこい陽動作戦をとってきても、平常心で いつもの自分のかるたが取れれば、ノープロブレムです。年1回、たとえば9月の第2土曜とか日 を決めて、職場のNo.1決定戦3番勝負などを定期戦化して、持ちまわりの優勝カップとかも造って、 開催してはいかがでしょうか。(人数がふえればリーグ戦化、トーナメント戦化してもよいでしょう ね。)もちろん、相手も必死でTOPの座を防衛すべくあらゆる手段を講じてくるでしょうが、もうこ れからは、丙君がTOPを取らなければならない時代なのです。

 最後にもうひとつ目標を示しましょう。後継者の育成です。これには、二つの意味があります。一 つは、自分の職場における後継者ということですし、もう一つは、かるた界における競技の後継者と いうことです。前者にも二つの方法があります。一つは、競技経験者を入社させる方法です。もう一 つは、職場の同僚や後輩(まだ先の話ですが)に競技を教えるということです。まあ、どちらも難し いことですが…。
 かるた界における競技の後継者を育てることは、丙君が競技の練習に行きつづけていけば、自然に 達成されていくでしょう。私などもこの年齢ですでに自分より年上の人やかるた歴が長い人と取るこ とが滅多になくなってきてしまいました。自分の大学時代の同期が取っているのを見るとなんとなく ホッとするようになりました。結構、後輩に負けるようになって、競技を離れていってしまう人が多 いものです。新人のころ指導して、こんなんで大丈夫かなと思っていた選手に負けるようになるのっ て、結構つらいものです。でも、それも自分が対戦したことで上達したのならば、まさに後継者の育 成に一役かったということなのです。後輩に負けたくないという気持ちが、後輩を育て、そして自分 を育てるのです。
 私も、まだまだ、強くなった後輩たちに一泡ふかせるつもりでがんばっています。「先輩、まだま だ、やりますね。」といつまでも言ってもらえるように…。

 それでは、また、練習場で顔をあわせましょう。丙君には、まだまだ、負けないつもりでがんばり ますから…。

 もちろん、仕事は、新たな気持ちでがんばってください。仕事の充実とかるたの充実は比例するとも いいますので…。   草々


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