元良親王
わびぬればいまはた同じ難波なる
みをつくしてもあはむとぞ思ふ
決まり字:ワビ(二字決まリ)
歌意は「あなたのことを思い悩んでいるのだから、今はどちらにしても同じことだ。
難波の澪標のように身を尽くしてもあなたに会いたいものだ。」ということになろうか。
「みをつくし」と「身を尽くし」が掛詞になっている。
作者の元良親王は、若くして退位させられた陽成院の退位後の子供である。
陽成院は、その後の皇統の継承には、面白くなかったようで、宇多天皇が、源姓を賜姓
されたあとに皇位についたことには、「当代は家人(臣下)にあらずや」と毒づいていた。
もし、陽成天皇が退位させられずにいたら、この元良親王は皇太子になっていたことであろう。
そんな、元良親王は、「一夜通いの君」とあだ名されるプレイボーイに成長する。
そのプレイボーイの歌がこの歌である。一夜通いの君であったとしても、その恋の一瞬一瞬を
精一杯恋していたからこそ、多くの女性と浮き名を流せたのでもあろう。だからきっと
「身を尽くしても」の気持ちは、本物であったにちがいない。
さて、「わ」の音で始まる歌は百首中、7首ある。
「わび」は「わ」札中、唯一の2字決まりである。
3字決まりは、「わがそ」と「わがい」のペアと「わすれ」と「わすら」のペアである。
そして、大山札(6字決まり)が「わたのはらこ」と「わたのはらや」である。
この7枚を二字めを並べて「がすびた」と覚える。
特に「わすら」と「わすれ」は”Wasu-r”まで一緒なので、よくお手付きしてしまう。意識しすぎると、
またさらにお手付きしやすくなる。逆に意識しないようにすると、それこそ取ることを「忘れ」て
しまうことになりかねない。要注意の札である。
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2008年3月 HITOSHI TAKANO