愛国百人一首

遣唐使使人母

旅人の宿せむ野に霜降らば
   吾が子羽ぐくめ天の鶴群


<愛国百人一首における決まり字>
タの一字決まり
<愛国百人一首における同音の数>
タ音はこの札のみ
<歌意・鑑賞>
 旅人である遣唐使一行が夜の宿りをする野に霜の降ることがあったならば、天を飛ぶ鶴たち よ、私の子をその鶴の羽のもとにいれて霜から守ってください。
 「羽ぐくめ」は、「育む」と同じだがそれは、親鳥が雛を羽の下に抱えることを語源とする。 「天の鶴群」は「あまのたづむら」と読む。天を行く鶴の群れのことである。
<コメント>
 天平5(733)年、多治比広成を遣唐大使として遣唐使が送られた。その一行に加わって いた子に贈った母親の歌である。
 名も知れぬが、子を思う親の心をあらわした歌であると思う。

 50首のリンクをはったところで、解説のリンクはりはいったん終了しようかと思っていた。 ところが、決まり字などと別の観点を忘れていることに気づいた。
 何かというと「競技かるた」ではなく「かるた遊び」の中で、無くてはならぬ「坊主めくり」 の観点であった。
 小倉百人一首では13人の坊主は、こちらではわずかに3人(西行法師宏覚禅師僧月照)である。
 そして、小倉百人一首21人の姫札は、こちらでは坊主と同様わずかに3人 (遣唐使使人母、成尋阿闍梨母安倍女郎である。
 これでは、坊主めくりをやっても面白くないであろう。
 さらに困ったことがある。小倉百人一首には、尼さんはいなかったが、こちらには一人いるのである。 野村望東尼である。
 出家者であるから、坊主にいれるか、女性だから姫にいれるか。
 しかし、姫に入れるのはおかしいような気がする。かといって、坊主というのには抵抗がある。もし 愛国百人一首で、坊主めくりのようなゲームをするとしたら、尼さんは特別の役札にするしかないだろ う。たとえば、自分の持ち札を場に出すのではなく、自分を除いたプレーヤーのうち持ち札が一番少な い人にゆずらなければならないというようなルールにすれば面白いかもしれない。
 まあ、いずれにしても、愛国百人一首は坊主めくりには、どうやら向かなさそうである。

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2008年5月31日  HITOSHI TAKANO