三条右大臣

名にしおはば逢坂山のさねかづら
   人に知られで来るよしもがな


決まり字:ナニシ(三字決まリ)
 この歌は、最初に掛詞宣言をしているようなものである。その名にあるとおり 「逢坂山」(逢う)の「さねかづら」(さ寝)よ、人に知られないで来る方法が あればなあというような意味であろうか。人に知られないで女と寝るために逢い に来る手段がないものかという露骨な男の思いを地名やら植物の名を掛詞として つかって、露骨にならない技巧が施されているということである。なお、さねかづら は「繰る」植物であり、「来る」はこの「繰る」にかけての縁語ということらしい。

「さねかずら」(植物園の標記は「づ」でなく「ず」でした)の写真


 作者の三条右大臣は、藤原定方で三条に屋敷があったところから三条右大臣と呼ばれる。 息子には、百人一首の中に朝忠がいる。

 「な」の音で始まる札は百人一首中8枚。「にしにはつげが」と覚える。
 「にし」とは、この歌「なにし」であり、「には」は「なにはえ」(難波江)と 「なにはが」(難波潟)である。「つげが」は、二文字めであり、「なつ」と「なげき」・ 「なげけ」、「ながか」・「ながら」である。
 「なげ」「なが」は、"Na-g"音なので、注意していないとお手付きの危険度が高い。 敵陣にも自陣にも出札がないのに、両方の陣の札を触ってしまう「空ダブ」というお手つき があるが、上段の取りでひっかけてしまったようなものを除くと、私の知っている範囲では この「な+G」音の札絡みの「空ダブ」が多い。もちろん(?)、私も経験者である。

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2008年3月  HITOSHI TAKANO