中納言朝忠

あふことの絶えてしなくばなかなかに
   人をも身をも恨みざらまし


決まり字:オーコ(三字決まリ)
 作者は、右大臣藤原定方の子。歌意は、「あなたと逢うことがなかったなら あなたをも自分自身をも恨むことなどなかったろうに」ということで、「あな たに逢ってしまったがゆえに、心みだれる恋心だ」ということを読んでいる。
 冒頭が、「あ」の文字で始まるので、「あ」札に分類するケースもあるが、 文字と読みの音は違うので、「オーコトノ」と読むこの歌は「お」札に分類 される。要注意である。
 「お」の音で始まる歌は、百人一首中に7首ある。

 2字決まりが、「おく」「おぐ」「おと」「おも」の4枚。
 3字決まりが、「あふこ」「おほけ」「おおえ」の3枚である。

 3字決まりの3枚は、「オー」が2枚読まれてからでないと2字決まりには ならない。このようなトリオは、他には、「あさじ」「あさぼらけあ」「あさ ぼらけう」と、「なにし」「なにわえ」「なにわが」と二種類あるが、3枚 すべてが3字決まりというのは、「オー」のトリオだけである。
 「お」で始まる7枚は、2字めをとって「おほふくもとぐ」と覚える。また、 トリオは「オー」として「オークモトグ」と覚えたりする。

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2008年3月  HITOSHI TAKANO