<百人秀歌>


源俊頼朝臣

山桜さきそめしより久方の
   くもゐにみゆる瀧の白糸


百人秀歌の決まり字:ヤマザク(四字決まリ)
 「さきそめ」は「咲き初め」である。「久方の」は「雲」にかかる枕詞。小倉 百人一首の藤原忠通の「わたのはらこ」の歌の三句め と四句目のはじめと同じ使い方である。忠通の歌では、5句目が「沖つ白波」なの で、「白」の共通性が感じられる。また、忠通の歌では、冒頭で「わたのはら」と 海を詠んでいるが、こちらでは、冒頭、山桜と「山」で対照的にな趣向を感じられる。
 おそらく定家の撰歌意識の中には、この二首は対になる ものだったのではないだろうか。

 山桜が咲き始めるころは霞がかかり雲のようであるが、その雲のような霞と山桜の合間から 瀧が白糸のように流れているのが見えることであるよ。

 このような訳になるであろうか。

 作者については、すでに小倉百人一首の歌や、愛国百人一首の歌のところで紹介済みである ので、そちらを参照したいただきたい。
 父親は源、子は 俊恵法師であることは、様々なところで書いた。加えるとすれば、 娘に源師俊室がいるということであろうか。師俊も歌人として勅撰集に11首採られている。
 さらに、能書家として有名な父(経信)と子(俊恵)を持っているせいか、根拠は無いと言 われるが「古筆切」の筆者に擬せられることが多い。また、歌論書の「俊頼髄脳」は紹介したが、 家集としては「散木奇歌集」がある。

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2008年5月23日  HITOSHI TAKANO