俊恵法師
夜もすがら物思ふころは明けやらで
閨のひまさへつれなかりけり
決まり字:ヨモ(二字決まリ)
歌の意味は、「物思いに一晩中悩んでいると夜明けの光がなかなか入って
こないこと寝所の隙間さえ無情に思えることである」ということになろうか。
北海道で行われている「板かるた」は下の句を読み、変体仮名で書かれた
板のかるた札を取る競技だ。変体仮名で書かれた板札は独特で、特徴的な
一部の文字が目立つように書かれている。その中でも「閨」という字は、
板かるたの長方形の中に四角く書かれており、非常に目立ちやすい。しかも
「ねや」の「ね」は、下の句の一字決まりである。(下の句の一字決まりは、
「つきとすさぬね」と覚える。)上の句の「むすめふさほせ」並みの札なの
である。
さて、作者は、源俊頼の子である。祖父は、源経信であり、祖父から孫
までの連続3代が百人一首に採られている。清原深養父・元輔・清少納言
の3代は、曾祖父からその曾孫までの一代空きが会っての3代なので、源家
のこちら3代のほうがある意味すごいのかもしれない。歌の家の者としての
生まれながらの三代目なのである。
「よ」の音で始まる歌は、百首中4枚である。「よも」と「よを」の二字
決まりが2枚、そして「よのなかは」と「よのなかよ」の五字決まり2枚
である。上の句は、下の句と違って、二字決まりであり、しかも、他の3枚
が読まれたあとでなければ一字決まりにはならないのだ。
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2008年3月 HITOSHI TAKANO