文屋朝康

白露に風の吹きしく秋の野は
   つらぬきとめぬ玉ぞ散りける


決まり字:シラ(二字決まリ)
 六歌仙の一人、文屋康秀の子である。
 秋の野の草の葉脈にそって露が連なる。その秋の野に風が吹くと、その草の葉から白露が飛び散る。 その白露を玉(真珠)に見立てて歌に詠んでいる。

 「秋の野に置く白露は玉なれやつらぬきかくる蜘蛛の糸すぢ」

 後撰集に入集している朝康のもう一首の歌である。
 朝康はよほど「秋の野の白露」というテーマが好きなのだろう。

 さて、取札に記されているところの「下の句」の決まり字にも一字決まりがある。この「つらぬき とめぬ」も一字決まりである。下の句の一字決まりを「つ」と覚える。7首あるのだ。 上の句の一字決まり「」も7首。不思議な一致である。


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2008年4月20日  HITOSHI TAKANO