恵慶法師
八重葎しげれる宿の寂しきに
ひとこそ見えね秋は来にけり
決まり字:ヤエ(二字決まリ)
ここでいう宿は、河原左大臣である源融の邸宅のあとである。贅をこらした
邸も今では寂れてしまい、人の姿を見ることもないが、秋だけが来ていると
いう情景を読んでいる。
百人一首には秋の歌が多いように思うのは気のせいだろうか。
「秋の田の」「秋風に」「村雨の>」「寂しさに」「月みれば」「吹くからに」
「白露に」「夕されば」「ちぎりおきし」「みよしのの」「奥山に」と「秋」
という語が入っている歌は、11首ある。もちろん、秋という言葉は出て
こなくても、「紅葉」や「月」など、秋の情景を歌った歌は、ほかにもあり、
季節的な秋の歌の数はもっと多いのである。
「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」
古今和歌集の巻四「秋歌上」の冒頭の藤原敏行の歌である。秋は気づかぬ
うちにやってきて、ふと秋だなぁと思うものである。
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2008年3月 HITOSHI TAKANO