大江千里

月みれば千々に物こそかなしけれ
   わがみひとつの秋にはあらねど


決まり字:ツキ(二字決まリ)
 作者は、阿保親王の曾孫。行平業平の兄弟からは甥にあたる。なお、名前の読みは 「せんり」ではなく「ちさと」であるので間違えないように。
 「秋は自分一人だけではなく皆に同じように訪れるものであるが、月をながめていると心は 千々に物悲しくなるのである。」という歌意である。
 百人一首には「月」を詠んだ歌というのも目立つ。異国の地で「月」を見た仲麿の歌の ように「月」はどこにいても見ることができるのだ。そのほかにも三条院紫式部素性法師深養父忠岑是則赤染衛門顕輔後徳大寺左大臣西行法師の歌が「月」に関連している。

 どこにいても見ることができる「月」。定家の撰歌意図にもおそらくこれがあったのだろう。
 そう、「月」は「隠岐」でも「佐渡」でも見えるのである。

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2008年4月13日  HITOSHI TAKANO