源 重之

風をいたみ岩うつ浪のおのれのみ
   くだけてものを思ふ頃かな


決まり字:カゼオ(三字決まリ)
 岩は、思いを寄せる女性に譬えている。そして浪は自分自身である。 風がはげしい。その中で浪は岩に砕け散る。女性に寄せるその思いは 砕けてしまい、思い悩むこの頃なのである。

 さて、作者は源姓である。百人一首の中に源姓は、この重之と兼昌、 そして宗干俊頼が、作者名に「源」と明示されている。そのほかは、 (河原左大臣)、(参議等)、経信(大納言経信)、実朝 (鎌倉右大臣)である。さらに、俊恵法師も俗名では「源」姓である。
 これに比べて、「源平」と並び称される平氏は「平兼盛」ただ一人 である。少々、バランスを欠くが、藤原氏の多さだってバランスを欠いて いるともいえる。しかし、これも「用捨在心」、定家の撰歌なのである。

 さて、「か」の音で始まる歌は百首中、4首である。
 二字決まりは「かく」と「かさ」で、三字決まりが「かぜを」と「かぜそ」 である。
 百枚の中に同音が四枚ある音は、4種類「は」と「や」と「よ」と「か」 である。これは「はやよか」と覚えてほしい。

小倉百人一首のページへ戻る
決まり字一覧へ
2008年3月  HITOSHI TAKANO