<百人秀歌>
俊恵法師
夜もすがら物思ふころはあけやらぬ
閨のひまさへつれなかりけり
百人秀歌では、小倉百人一首にない4首の加入と小倉百人一首の3首の減によって
競技かるた的に見れば、決まり字や、同音数の変化が生じた。
この歌のように、歌の途中の一部の違いは、競技的な影響はないといってもよいだろ
う。「あけやらで」(一首)←→「あけやらぬ」(秀歌)なので、意味的
にも「あけていない」ことを言っているので、大きな違いはないといえよう。「で」は打ち消しの接続助詞で、「ぬ」は打ち消しの助動詞「ず」の連体形である。どちらも「打ち消し」ということで音は変わるが、意味は変わらない。一首全体の中では「ぬ」の音のほうが、全体が柔らかく聞こえるように思える。
さて、では、競技的にみたときにどんな影響がでたかを見てみよう。
まずは、一字決まりが百人一首に比べて、二枚増えた。順徳院の
「もも」が消え、源俊頼朝臣の「うか」が差し代わったので、
同音2枚の「も」と「う」が消えて、「も」と「う」が一字決まりになった。一字決まりは、
7枚から9枚に増加する。
次に後鳥羽院の「ひとも」がなくなったので、同音3枚の「ひ」
が、「ひと」・「ひさ」の2枚札になり、「ひとは」(三字決まり)の決まり字は、
「ひと」の「二字決まり」に変化する。
そして、ふえた3首と差し代わった俊頼の1首によって
同音の枚数の変わった音が、「き」音が3枚→4枚へ、「か」音・「や」音・「よ」音が
4枚→5枚へという具合となる。
権中納言長方の「きのくにの」は「きの」の二字決まりと
して「き」音に加わる。「き」音は、「きの」・「きり」二字決まり2枚と六字決まり(大山札)2枚の構成と
なる。
権中納言国信の「かすがのの」の歌は「かす」の二字決まり
として「か」音に加わる。「か」音は、「かく」・「かさ」・「かす」二字決まり3枚と「かぜそ」・「かぜを」の三字決まり2枚の構成となる。
源俊頼の「うかりける」の歌と差し代えらえた「やまざくら」の歌は、すでに
「やまざとは」の歌があるので、「やまざく」の四字決まりで
「や」音に加入する。三字決まりだった「やまざ」は「やまざと」の四字決まりに変わる。
「やまがわに」の歌があるので、「やま」始まりの三字決まりが
1枚、四字決まりが2枚、そして二字決まり「やえ」・「やす」が2枚というのが「や」音の構成となる。
そして、一条院皇后宮の「よもすがらちぎりしことをわすれずば」
の歌である。ここで紹介した俊恵法師の歌も「よもすがら」で始まるので、一条院皇后宮の
歌は「よもすがらち」の六字決まりとして加わり、いままで二字きまりだった俊恵の「よも」
は「よもすがらも」の六字決まりに変化する。これによって「よ」音は「よもすがら」組の
六字決まりが2枚、「よのなかよ」・「よのなかは」の五字決まりが2枚、そして「よを」
の二字決まりが1枚の構成となる。非常に決まりの長い札の多い音ということになる。
「よもすがら」の六字決まりの加入で、いわゆる大山札も「きみがため」・「わたのはら」・
「あさぼらけ」の従来の3組6枚から、4組8枚となったのである。
試合の時の大山札の置き場所は、囲いやすい場所を選んだり、囲われにくい場所を選んだりで
競技者の個性のでる札だと思っているので、百人秀歌で競技かるたをすれば、また、選手の
個性の出方のバリエーションが増えるような気がするのである。
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2008年6月5日 HITOSHI TAKANO