【 小倉百人一首 暗記のために 】

 「競技かるた」の世界に百首の歌を全部覚えているからといって入ってくる人たちがいる。
 歌を覚えているからと言って、暗記の手間がはぶけていいかというとそうでもない。上の句 から順番に言わないと思い出せないような覚え方では駄目なのである。取り札を見て瞬時に 上の句が出てくるようでなければならない。
 これで上の句が即座に出る人ならば、あとの作業はわりと簡単である。上の句で覚えていたものを 決まり字でいえるようにすればよいだけだからだ。
 いずれにしても、下の句をみて上の句を思い浮かべる練習に資するため、下の句にリンクをはって 歌全体を見ることができるようにした。
 何かに役立てていただければ幸いである。

目次(小倉・秀歌・愛国)

愛国百人一首の「下の句」
小倉百人一首の「決まり字」

【 小倉百人一首 下の句音別 】

一枚札(つきとすさぬね)

つらぬきとめぬたまぞ散りける
霧立ちのぼる秋の夕暮
外山の霞たたずもあらなむ
すゑの松山なみこさじとは
さしもしらじなもゆる思ひを
ぬれにぞぬれし色はかはらず
閨のひまさへつれなかりけり

二枚札(おたむゆうやけ)

置きまどはせる白菊の花
をとめの姿しばしとどめむ

ただ有明の月ぞのこれる
たつたの川の錦なりけり

昔は物を思はざりけり
むべ山風を嵐といふらむ

ゆくへも知らぬ恋のみちかな
ゆめの通ひ路ひとめよくらむ

うきにたへぬは涙なりけり
うしとみしよぞ今は恋しき

焼くや藻塩の身もこがれつつ
やまのおくにもしかぞなくなる

けふ九重ににほひぬるかな
けふを限りの命ともがな

三枚札(はもまふ)

はげしかれとは祈らぬものを
はなぞ昔の香ににほひける
花よりほかに知る人もなし

ものや思ふと人のとふまで
紅葉の錦神のまにまに
もれいづる月のかげのさやけさ

まだふみも見ず天の橋立
まつとしきかば今帰り来む
まつも昔の友ならなくに

富士の高嶺に雪はふりつつ
ふりゆくものは我が身なりけり
ふるさとさむく衣うつなり

四枚札(くしよ)

くだけて物を思ふころかな
雲ゐにまがふ沖つ白波
雲がくれにし夜半の月かな
雲のいづこに月やどるらむ

しづ心なく花の散るらむ
しのぶることのよはりもぞする
知るも知らぬも逢坂の関
白きを見れば夜ぞふけにける

吉野の里に降れる白雪
よに逢坂の関はゆるさじ
世をうぢ山と人はいふなり
よを思ふゆゑにもの思ふ身は

五枚札(か)

かひなくたたむなこそ惜しけれ
かけじや袖の濡れもこそすれ
かこちがほなるわが涙かな
かたふくまでの月をみしかな
からくれなゐに水くくるとは

六枚札(なわこ)

なほあまりある昔なりけり
なほ恨めしきあさぼらけかな
ながくもがなと思ひけるかな
ながながし夜を一人かもねむ
流れもあへぬ紅葉なりけり
なこそ流れてなほきこへけれ

我が衣手に雪はふりつつ
わが衣手は露にぬれつつ
わが立つそまに墨染めの袖
わがみひとつの秋にはあらねど
わが身世にふるながめせしまに
われてもすゑにあはむとぞ思ふ

こひしかるらむ夜半の月かな
恋ぞつもりて淵となりぬる
恋に朽ちなむなこそ惜しけれ
声聞くとくぞ秋はかなしき
ころもかたしき一人かもねむ
衣ほすてふ天の香久山

 

七枚札(いみ)

いかに久しきものとかは知る
いくよ寝覚めぬ須磨の関守
いつこも同じ秋の夕暮れ
いつみきとてか恋しかるらむ
いでそよ人をわすれやはする
今ひとたびのあふこともがな
いまひとたびのみゆきまたなむ

三笠の山にいでし月かも
みそぎぞ夏のしるしなりける
みだれそめにしわれならなくに
みだれてけさはものをこそ思へ
みのいたづらになりぬべきかな
みをつくしてもあはむとぞ思ふ
みをつくしてやこひわたるべき

 

八枚札(あ)

あかつきばかり憂きものはなし
あしのまろやに秋風ぞ吹く
海人の小船のつなでかなしも
あまりてなどか人の恋しき
あらはれわたる瀬々の網代木
ありあけの月を待ち出でつるかな
あはでこの世をすぐしてよとや
あはれことしの秋もいぬめり

十枚札(「ひ」:とる)

人こそ知らねかわくまもなし
人こそ見へね秋は来にけり
人知れずこそ思ひそめしか
人づてならでいふよしもがな
人に知られで来るよしもがな
人には告げよ海人の釣舟
ひとの命のをしくもあるかな
ひとめも草もかれぬと思へば
ひとをもみをも恨みざらまし
昼は消えつつものをこそ思へ


附録:「百人秀歌」4首

くもゐにみゆる瀧の白糸

恋む涙の色ぞゆかしき

たまさかにだに逢ひみてしかな

つれなく見ゆる春のあは雪
 


☆ 小倉百人一首一覧へ
★ 愛国百人一首一覧へ
☆ 愛国百人一首の「決まり字」ヘ
2008年6月  HITOSHI TAKANO